なぜかジョージハリスンに惹かれる今日この頃
「ビートルズ」と聞けば、たいていの人がジョンレノンとポールマッカートニーの名前をまず思い浮かべると思います。この二人が中心となって数々の名曲を揺るぎのない事実ですね。でも、その陰で静かに、そして確かに存在感を放っているメンバーがいました。それがジョージハリスンです。
ここでは、そんなジョージがビートルズ時代に生み出した楽曲の中から、超個人的に選んだ「ベスト10」を紹介したいと思います。レノンマッカートニーという巨大な才能のそばにいらジョージが、限られた枠の中で、いかに個性的な曲を放ち、時にバンドの音楽性すら押し広げていたのか。その魅力をお伝えできればと思います。
それでは、さっそく!
第10位〜第6位:ジョージらしさ爆発の個性派楽曲たち
第10位:Only a Northern Song(『Yellow Submarine』収録)
まずはこの曲、「Only a Northern Song」です。アルバム『Yellow Submarine』に収録されているがゆえに、あまり目立たない曲です。愛と平和のテーマにした映画のサントラに収録されているのですは、曲の内容は、そんなの関係なしです。ジョージ自らの楽曲が音楽出版社「ノーザンソングス」において不遇な扱いを受けていることに対し、皮肉を込めて書いた作品です。
音楽的には、不協和音を多用し、実験的でサイケデリックなサウンドを追求。意図的にずれたコード進行や変則的なメロディが特徴的で、メッセージ性を重視した作風となっています。全体的にガチャガチャとしていますが、それがまたいい!ジョージの不満と反骨精神を示しています。ということで、第10位でした。
第9位:If I Needed Someone(『Rubber Soul』収録)
ジョージがフォークロックの影響を色濃く受けながら作曲した中期の作品です。特にザ・バーズのギタースタイルを意識したアルペジオのリフが特徴的で、当時のジョージの音楽的嗜好が反映されています。ちょっぴりと、ジョージはこの曲を通じて、独自のソングライターとしての資質を開花させたといっても過言ではないでしょう。
歌詞は恋愛をテーマにしつつも、「もし君が必要な人だったならば」という仮定法により、どこか距離を感じさせる構造となっており、ジョージ特有の控えめで内省的な語り口が表れています。ポールはこの曲に対して「ジョージがバンドのために初めて書いた画期的な曲」と評価。ポールが言うように、バンド内での作曲家としての地位を築くきっかけとなった一曲だと思います。なので、9位!
第8位:Old Brown Shoe(『Past Masters』収録)
リズミカルかつファンキーな演奏が印象的ですねー。「Old Brown Shoe」は、ジョージの楽曲の中でも異彩を放つ存在です。テンポの速いリズムに乗せて繰り広げられるメロディは、ジョージの楽曲の中でもとりわけ活力に満ちており、躍動感が際立っています。
歌詞は「右足用の靴を左足に履いたような違和感」といった比喩を通して、愛や存在の二面性を語る内容となっており、単なるラブソングにとどまらない哲学的な視点が垣間見えます。なんともジョージらしい!また、ベースラインの技巧的な演奏も聴きどころ。この演奏、誰がしているのでしょうか?ジョージ説も根強くあるようですが、最新の情報だとポールとなっているようです。ということで、「Old Brown Shoe」でした。
第7位:Taxman(『Revolver』収録)
こちらもベースの演奏がゾクゾクする楽曲ですね。「Taxman」は、ジョージが作詞作曲を手がけた楽曲。アルバム『Revolver』の冒頭を飾る楽曲であり、アルバムの1曲目に配置されている唯一のジョージ楽曲です。高額所得者として重税に苦しむジョージが、英国の税制に対して強烈な皮肉を込めた歌詞を展開しており、ビートルズにおいて初めて政治的・社会的メッセージを明確に打ち出した作品とされています。
音楽的には、エッジの効いたギター・リフとミドルテンポのリズムが相まって、ロックンロールの持つ鋭利な表現力を遺憾なく発揮していますね。ギター・ソロはポールが演奏しています。その切れ味のあるサウンドが曲全体の攻撃的な印象を補強しています。世の中的にも非常に高い評価を得ている作品であると同時に、ビートルズ内でのジョージの地位向上を象徴する作品でもあります。
第6位:While My Guitar Gently Weeps(『The Beatles』収録)
でました!ジョージの特大ホームラン楽曲です。『While My Guitar Gently Weeps』は、ジョージがふと目にした ”そっと泣く”(gently weeps)という言葉から生まれた名曲。テーマは、平たく言うと『なぜ世界はもっと優しくなれないのか?』です。これを、泣くようなギターの音に乗せて歌っています。
ホワイトアルバムのレコーディング当時、ジョージはこの曲をバンドで録音する際、「みんな真剣にやってくれない」と悩んでいたのだとか。そこで親友のエリック・クラプトンにギター演奏を頼み、プロとしての完成度を守ったのです。この曲は、ジョージが単なる”ビートルズの弟分”から、
『Something』(1969年)のような世界的名曲を作れる本物の作曲家へ成長した証と言えるでしょう。
第5位〜第2位:メロディ・哲学・実験精神の融合
第5位:The Inner Light(『Past Masters』収録)
堂々の第5位はこの曲です。ジョージがインド哲学と音楽に傾倒した成果が最も純粋なかたちで結実した一曲ではないでしょうか。ジョンもポールも絶賛した作品で、ジョージの作品として初めてシングル版に収録されています(Lady MadonnaのB面)。老子の『道徳経』をもとにした歌詞は、深遠な精神性に満ちています。
この曲はインドのボンベイにて現地の伝統楽器奏者とともに録音され、タブラやシタールなどが織り成す音色が独特の浮遊感を生み出しています。本格的インドを漂わせながらも、メロディは美しいわけです。最高です。ビートルズのシングルB面曲としては異例の完全なインド音楽作品で、ポピュラー音楽と東洋思想の本格的融合という試みにおいて、後続のミュージシャンたちに大きな影響を与えています。
第4位:Here Comes The Sun(『Abbey Road』収録)
この曲、、Spotifyで最もストリーミング再生されたビートルズの楽曲らしく、2018年時点で、7億回以上の再生回数を記録しているのだとか。そんな超有名曲を4位にしてしまいました。「Here Comes The Sun」は、ジョージがクラプトンの自宅の庭で過ごしたときに着想を得た作品です。クラプトンのところには、アップルレコードの会議をサボって遊びに行っていました。そこで、生まれたのが、長い冬の後に訪れる春の喜びを描いたこの名曲。会議はサボってみるもんですね。
アコースティック・ギターの音色が印象的に響くイントロに始まり、シンセサイザーによる装飾がさりげなく楽曲全体をあ宿っています。構成はシンプルながらも、拍子の変化や巧妙な転調が施されており、聴き手に安らぎと驚きを同時にもたらす巧緻な作品になっています。
アルバム『Abbey Road』中でも屈指の人気を誇り、現在に至るまで幅広い世代に愛され続ける一曲として、ジョージの代表作の地位を確立している大名曲です。
第3位:Piggies(『The Beatles』収録)
なんだかわからないけど、個人的に好きなのがこの作品。「Piggies」です。ジョージらしいの社会風刺を大胆に織り込んだ異色の楽曲ですね。ブルジョワ社会に対する皮肉を“子豚たち(ピッギーズ)”というメタファーを用いて描き出し、優雅なチェンバロの音色と相反する辛辣な歌詞が印象的ジョージ・オーウェルの小説『動物農場』が連想されますね。
アレンジにはクラシック音楽の影響が感じられ、プロデューサーのジョージ・マーティンが担当したバロック調の編曲が、作品に風刺劇のような風味を与えています。ビートルズの中でも特に異質な楽曲のひとつでありながら、その皮肉と戯画的な構成によって、一種の芸術的戯曲として高い完成度を誇っていると思いませんか?
Clutching forks and knives to eat their bacon(ナイフとフォークをしっかり握って、彼らのベーコンを食べる)。強烈な歌詞ですね。ジョンレノンのアイデアだそうです。
第2位:Something(『Abbey Road』収録)
この曲はやっぱり外せませんね。「Something」は、ジョージ作曲の作品の中でも、最も評価が高いのではないでしょうか。ソロキャリアを通じてもそう思います。歌詞で語られている普遍的な愛もさることながら、やっぱりメロディが美しすぎるのです。ビートルズのシングルA面になるのも納得です。名曲すぎて、他のミュージシャンにカバーされまくっている点にも注目です。ビートルズ作品の中では「Yesterday」に次ぐカバー記録を持っています。
ポールのベースラインも最高です。ジョージ自身はあまり好ましく思っていないようですが、私的には名演だと思います。この曲も「Here Comes The Sun」と同じく、『Abbey Road』に収録されているんですよね。そりゃ名盤になりますわな。ビートルズの音楽が複雑化していく晩年において、シンプルでありながらも深い情緒を湛えるこの作品は、ジョージの成熟と存在感の頂点を象徴する傑作だと思います。
ジョージのユーモアと鋭さの結晶
第1位:Savoy Truffle(『The Beatles』収録)
映えある1位に選んだのは「Savoy Truffle」です。今の気分はこの曲が1位なのです。親友のクラプトンの「甘いもの好き」を題材にした作品で、歌詞はただただ、お菓子の名前を列挙すると言うもの。この歌詞の背後には享楽の代償や自己破壊的な欲望といったテーマが潜んでいると、解釈する評論家もいるようですが、ちょっと考えすぎではないかと思います。ただ、お菓子の名前を列挙したかったのではないかと思っています。ロックンロールってそんなもんなんじゃないかな。あえて深読みするとしたら、クラプトンへの注意喚起くらいでしょう。
音楽的には、分厚いホーン・セクションが主導するファンキーでエネルギッシュなアレンジが特徴。ビートルズ作品の中でもとりわけ歯切れの良いファンク調のノリが際立つ仕上がりとなっています。聞いていて、単純に面白い!それから、クラプトンの虫歯への忠告という軽妙な主題も面白い!そんなこんなで、今の気分は、この曲が1位なのです。
静かなる革新者の軌跡
今回あらためてジョージの楽曲を精査してみると、彼が単なる“ビートルズの第三の男”ではなかったことが、楽曲そのものから雄弁に伝わってきますね。愛と精神性を見つめた内省的な作品から、社会に対する鋭い風刺、果ては陽気な皮肉と祝祭的サウンドまで、その表現領域はレノンマッカートニーに引けを取らないほど。
ジョージは決して声高に主張するタイプではないですが、音楽には確固たる信念と、深い人間的まなざしが宿っているます。だからこそ、その作品は今なお聴く者の心に静かに語りかけ、共鳴を呼び起こすのだと思います。このランキングが、皆さんにとってジョージ再発見のきっかけとなれば、幸いです。以上、「絶対にまた聴きたくなる!ジョージハリスン作曲楽曲 私的ベスト10」でした。おしまい!
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もう少しビートルズを詳しく知りたい方は、歴史を押さえておきましょう。10分で分かるバージョンを用意しております。そして、忘れちゃいけない名曲ぞろいのシングルの歴史もあります。
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