「俺たちの歌はすべて反戦歌だ」
我らがジョンレノンはそう語りました。アメリカがベトナム戦争の真っただ中にあった1960年代のことです。
- ビートルズの歌が反戦歌?
- そんな曲あったっけ?
- Revolution?
- でも、この発言時にはまだ作ってなかったような…
私は長年、この発言を不思議に思っていました。
どこが反戦なんだろう?
反戦歌と言えば、ボブディランのBlowin' in the Wind(風にふかれて)です。この曲が収録されているアルバム『The Freewheelin' Bob Dylan』には、Blowin' in the Windをはじめ、反戦歌が満載!戦争の恐ろしさと愚かさが歌われています。
きっと、こういうのを反戦歌と言うのだろう。
そう勝手に決めつけていました。だから、私の中ではビートルズ(The Beatles)の曲は反戦歌枠に入っておらず、ジョンの発言もよく理解できないでいました。なんだったら、ジョンのディランに対する嫉妬、「ジョンレノン(John Lennon)ったら負けず嫌いなんだから」みたいなこともちょっと思っていました。
でも、ジョンが意味していたのは、そういうことじゃないんですね。反戦のやり方にもいろいろあって、ビートルズにはビートルズ流の反戦のやり方があったのです。そのことにようやく気付きました。
ということで、今回はビートルズ的反戦歌を厳選して3曲紹介します。
▼動画も用意しておりますので、よければどうぞ。
ビートルズ流の反戦とは?
ビートルズは戦争反対を訴えるだとか、直接政府を批判するだとかしている曲は、ほぼありません。政府批判をしている曲にTaxmanがありますが、でもこの曲は「税金が高いぞ!」ということを訴えているだけで、直接反戦ではないですね。
では、ビートルズ流の反戦ってなんだったのかというと、それはもうLoveだったんじゃないかなと思います。こう言ってしまうと、なんかちょっとウソくさい感じがもしますが、それでもやっぱりLoveには戦争を食い止める力があると思うんです。
もしかしたら、直接的に反戦を訴えるよりも効果があるんじゃないかとも思っています。例えるなら、「北風と太陽」です。Loveは太陽のほう。
ビートルズはLoveを歌うことによって、反戦していたんです。そう考えると「俺たちの歌はすべて反戦歌だ」このジョンの発言にも合点がいきます。
確かに、ビートルズの曲のテーマはほとんどLoveなのです。だから選ぶのが難しいでのすが、個人的にこれは!と思うものを紹介します。
反戦!ということを意識して聞いてみてください!
ずばりLoveがテーマの All You Need Is Love
ビートルズ的反戦歌にAll You Need Is Loveは外せませんね。1967年、Love & Peaceなフラワームーブメントの最中に作られたジョンレノンの名作です。
メロディの良さもさることながら、訴えている歌詞が素晴らしいのです。
歌詞の解釈には諸説あり、テーマとして掲げられているLoveは「ポジティブなの?ネガティブなの?」という問題はありますが、とにもかくにもLoveの力で世界を変えようとした曲です。
All You Need Is Love
この強力なフレーズを超えるコピーが近年あったでしょうか。シェイクスピアのLove is Blindと肩を並べる名コピーだと私は思っています。
この普遍的なLoveを時代の先頭を走っていたビートルズがテーマとして扱い、そして歌っているってことに、感動を覚えます。乾杯!です。
戦争なんてしている時間はない!I Want to Hold Your Hand
若者の気持ちを知るならI Want to Hold Your Handを聞けばOKです。古今東西、たいていの若者の本音はI Want to Hold Your Handです。それは金持ちであっても貧しくてもです。いや、年齢を重ねても性別を問わず人はI Want to Hold Your Handですね。
この曲のメッセージは、いたってシンプル。
「君の手を握りたい!」です。
他愛のない恋愛の歌なのかもしれませんが、この曲には言語を超え、世代を超え、宗教を超えて人々を熱狂させる力があります。YouTubeでこの曲を探してみると、この曲のパワーがよくわかります。ストリートでの演奏でみんな熱狂しています(参考動画:YouTubeへ)。
この様子をみて、戦争を起こそうなんて考える奴がいたら、お会いしたいものです。
I Want to Hold Your Handを聞けば、人類は幸せなのです。そう、DNAにプログラミングされているのです。とにもかくにも、「君の手を握りたい!」というメッセージは強い!
戦争なんかをするよりも、手を握ったほうが幸せになれるのです。人生は、I Want to Hold Your Hand。永遠普遍の真理です。
ポールマッカートニー流の反戦歌 Yellow Submarine
最後の3曲目は、リンゴスターの歌うYellow Submarineです。言わずと知れた天才ポールマッカートニー(Paul McCartney)による作品です。この曲も強力な反戦歌だと思います。
Loveがテーマであるかどうかは議論の余地があると思いますが、歌詞はほんわかしていて楽しい内容です。当たり前ですが、爆弾的なものは登場しません。
ただ、よく考えると潜水艦(=Submarine)は軍事利用が目的の乗り物なんですね。
その潜水艦を子供向けの曲のテーマに使い、歌詞を冒険的なものに仕立て上げ、完全に潜水艦のイメージを戦争から分離させることに成功しています。
誰もが口ずさめる単純明快なメロディーだから、世界中で歌われています。この曲もI Want to Hold Your Handと同じく、人種、宗教、言語、世代を超えています。
ちなみにリバプールのマジカルミステリーツアーという観光ツアーでは、バスの中でこの曲を合唱します(別に強制されているわけではなく、自然と合唱になります)。それこそ、人種、宗教、言語、世代が違う観光客が一つのバスの中でYellow Submarineを合唱するのです。
バスの中は、世界平和が見事に完成。
隣に座っている人のひじが当たったといって揉めようとしている人もいないはずです。ましてやこの瞬間に戦争を起こそうなんて思っている人なんているはずもありません。
我々はまんまとポールマッカートニーの策にハマってしまいます。さすがポールです。ソロになり、ポールもいろいろと反戦歌を書いていますが、この曲以上に反戦な歌はないんじゃないでしょうか。
俺たちの歌はすべて反戦歌だ
ビートルズ的反戦歌を3曲紹介してきました。
- All You Need Is Love
- I Want to Hold Your Hand
- Yellow Submarine
この3曲です。
どの曲もLoveをテーマにしていたり、聞くだけで幸せになれる曲です。ただ、そんなことを言い出したら、ビートルズの曲はすべてLoveであったり聞くだけでハッピーになれるじゃないか!という声が聞こえてきそうです。
その通りです。
だから「俺たちの歌はすべて反戦歌だ」なんです。
以上、ビートルズ流の反戦歌でした。今回紹介した曲はビートルズのベスト盤『The Beatles1』で聞けます。
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もう少しビートルズを詳しく知りたい方は、歴史を押さえておきましょう。10分で分かるバージョンを用意しております。そして、忘れちゃいけない名曲ぞろいのシングルの歴史もあります。
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