わずか約8年の活動期間中にビートルズが残した楽曲は213曲あります。多忙であった彼らは、新聞や雑誌、テレビコマーシャルなど、日々のあらゆるものからヒントを得て、曲作りに活かしていたそうです。
今回は、そんなビートルズの意外な方法で作られた楽曲に焦点をあてます。少々、無理矢理な部分もありますが、優しい気持ちで見ていってください。8曲ほど紹介いたします。
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それではさっそく。
- 作詞をした日の新聞記事が歌詞に… A Day in the Life
- サーカス団のポスターが歌詞に… Being For The Benefit Of Mr. Kite!
- 銃雑誌の記事のタイトルが歌詞に… Happiness Is A Warm Gun
- コーンフレークのCMが元ネタ… Good Morning Good Morning
- エリッククラプトンへの警鐘… Savoy Truffle
- 親戚のおばさんがアドバイス!? Paperback Writer
- リンゴがぼそりとつぶやいた A Hard Day's Night
- 歌詞もタイトルも… Tomorrow Never Knows
- ビートルズ流 曲作りのヒントは日常にあり
作詞をした日の新聞記事が歌詞に… A Day in the Life
1曲目はアルバム『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』から。世紀の名盤と言われるこのアルバムのハイライト中のハイライト曲である A Day in the Life です。この曲は、ジョンレノンとポールマッカートニーの共同作品で、非常に評価の高い楽曲。
どのあたりが意外な方法なのかというと、作詞の部分です。
ジョンが作った部分なのですが、その部分って実は作詞した日の新聞記事を元ネタにしているんです。新聞記事の内容を良い感じに詩的にして歌詞として仕上げています。「車の事故」と「ランカシャー州のブラックバーンに4000個の穴」の部分が、その新聞記事の内容。
当時、ジョンは The Daily MirrorとDaily Mail を購読していたらしく、A Day in the Life の作詞をする日にちょうどこの2つの記事が載ってたんですね。ファンとしてはその日の新聞がほしいところです。ちなみにポールが作った部分は完全に空想とのこと。新聞記事という現実と空想が入り混じる世紀の大名曲ですね。
サーカス団のポスターが歌詞に… Being For The Benefit Of Mr. Kite!
続いても同じく『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』からBeing For The Benefit Of Mr. Kite! です。曲調だけを聞くと、なんとなくですが、サーカスな感じがしませんか?それもそのはず、この曲はサーカス団のポスターの宣伝文句を繋ぎ合わせたものが歌詞になっています。
作者はジョンレノン。当のサーカス団のポスターは骨董屋で購入したものらしいです。このポスターとジョンが一緒に収まっている写真もありますので、これは当時から結構有名な話だったのかもしれませんね。
A Day in the Lifeの新聞記事といい、Mr.Kate!のポスターといい、ジョンは活字からヒントを得て作詞をすることが多かったのかもしれませんね。続いては、もう1曲、活字系から。
銃雑誌の記事のタイトルが歌詞に… Happiness Is A Warm Gun
二枚組超大作アルバム『The Beatles』に収録されているジョンの作品です。この曲はアメリカのライフル協会が発行している雑誌に掲載されていた記事からインスピレーションを得て作られています。インスピレーションというか、記事のタイトルがそのまま曲のタイトルになっています。
後年、ジョンはこの記事のタイトルについて、「よくもまあ、こんなとんでもないことを言えるものだと思った。」と語っています。強烈な印象として残っていたのでしょうか。その後、1980年にジョンが凶弾に倒れたことを思うと、ファンとしては「ああ…、ジョンはこんなこと言ってたんだ…」と思ってしまいます。
我らがポールマッカートニーも2018年に銃暴力へのデモ行進に参加して、こう述べています。「僕の親友の一人が、この付近で銃で殺されされたんだ。私にとって、これは重要だ。」
ちなみに、この銃雑誌の記事のタイトルにも元ネタがあります。Happiness is a Warm Puppy(幸せはあったかい仔犬)がそれ。スヌーピーの漫画のタイトルです。
コーンフレークのCMが元ネタ… Good Morning Good Morning
続いては活字じゃないところからヒントを得た作品です。これも『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』に収録されている楽曲で、ジョンの作品です。インスピレーションの源泉は、ケロッグのコーンフレークのテレビコマーシャル。しっかりとジョンが元ネタだと語っています。
どんなCMか見てみたい気がしますね。いったいどの部分がヒントになったのでしょうか。正確にはわからないのですが、歌詞のGood Morning Good Morning の部分っぽい雰囲気です。
それにしても『Sgt. Pepper's~』に収録されているジョンの曲は、何かしらのものから着想をえているものが多いですね。そういえば、Lucy in the Sky with Diamonds も息子のジュリアンが書いた絵から着想をえていますし…。もしかしたらジョンレノン、この時期、スランプだったのかもしれません。
エリッククラプトンへの警鐘… Savoy Truffle
続いてはジョージハリスンの作品です。『The Beatles』収録のこの曲は、ジョージの友人であるエリッククラプトンと大きく関りがあるようです。具体的にヒントを得たというよりも、テーマにしたといったほうがいいかもしれません。
虫歯がたくさんあるのにチョコ食べすぎだろ!
甘いもの好きのクラプトンが大量にチョコを食べていたのが作曲の発端となっているようです。それにしても、この曲の歌詞はぶっ飛んでいます。ほとんど、お菓子の名前の羅列です。ジョージ曰く、「なんの意味ない歌」とのことですが、非常にロックンロールな名曲です。歌詞はともあれ評価の高い楽曲。
ちなみに歌詞にポール作のOb-La-Di, Ob-La-Da が登場します。どうして登場させたのか、こういうのを考えるのが楽しいんですね。
親戚のおばさんがアドバイス!? Paperback Writer
続く作品はポールマッカートニーの作品。1966年にリリースされた大ヒットシングル Paperback Writer です。ジョンレノンとは対照的にポールは曲作りに新聞などの活字からのインスピレーションはなく、それもそのはずビートルズ時代にポールは新聞を取っていなかったそうです。噂ですが。
そんなポールの作品、Paperback Writer は親戚のリルおばさんからの一言がきっかけになっています。「職業を題材にした歌を作ってみたら」と言われて、作り上げたのだそう。確かにこのころのビートルズ作品、特にポールの作品には珍しく恋愛ものの曲じゃないですね。
このあたりからビートルズ全体として歌詞に変化がでてくるのですが、この作品もその大きな流れの一つかもしれません。少なくともシングル作品ではジョンのHelp!に続く2作品目かな。
ということで、Paperback Writer でした。徐々に無理矢理感が出てきていますが、優しい気持ちを忘れずに見ていってください。
リンゴがぼそりとつぶやいた A Hard Day's Night
続く A Hard Day's Night も他の人の発言がヒントになり生まれた曲です。まあ、他の人といってもメンバーのリンゴスターなんですが。言わずと知れたこの A Hard Day's Night はジョンの作品。ビートルズの7枚目のシングルです。
リンゴがぼそりとつぶやいた It's been a hard day's night がタイトルになっています。このタイトルの文法でどこが間違っているかというと、day's nightの部分らしいです。基本的にdayは一日を指す単語なのでそこにアポストロフィーエスを付けるのは間違いなんだとか。よく分かりませんが、そういうことです。
それにしても、ぼそりとつぶやいた一言が、大ヒットシングルのタイトルになり、さらに主演映画のタイトルにもなるって、すごいですね。ジョンもポールも、こうした文法的には間違っているリンゴの独特の言い回しが気に入っており、ある意味、信頼を置いていたようです。Eight Days a Weekのタイトルもリンゴの発言がもとになっているという説もあります。
歌詞もタイトルも… Tomorrow Never Knows
最後の曲はアルバム『Revolver』からTomorrow Never Knows です。作者はジョンレノン。この曲のタイトルもリンゴの発言が拝借されているようです。ジョン曰く、「ちょっと重すぎる歌詞をマイルドにするために、リンゴの力を拝借した」とのこと。ちなみに、このTomorrow Never Knowsというタイトルも文法的にはおかしいらしいです。
ジョンがこのように述べるこの曲の歌詞もまたティモシー・リアリーの著書『チベット死者の書サイケデリック・バージョン』からインスピレーションを受けて制作されているのだとか。この本は、要するに良くないドラッグへの指南書。なのでTomorrow Never Knowsも完全にドラッグソングです。
典型的な中期ビートルズのサイケデリックソングと言っても良いかもしれません。単調なリズム、延々と繰り返されるメロディを聞くとトランスすること間違いなしです。ハウスやテクノの先駆けとも言われるこの曲を、何の情報もなく聞くと、絶対にビートルズの曲だと分からないと思います。ということで、Tomorrow Never Knows でした。
ビートルズ流 曲作りのヒントは日常にあり
ビートルズの意外な方法で作られた楽曲を紹介してきました。ここで紹介したのはこの8曲。
- A Day in the Life
- Being For The Benefit Of Mr. Kite!
- Happiness Is A Warm Gun
- Good Morning Good Morning
- Savoy Truffle
- Paperback Writer
- A Hard Day's Night
- Tomorrow Never Knows
ジョンの作品率が高いのが気になるところですね。
多忙を極めていたビートルズはいつでもどこでも作曲をしていたそうです。特にコンサートツアーをやっていた1960年初期から中期にかけては、時間の合間を見つけては作曲三昧でした。それこそ、コンサート会場の楽屋やホテルなど、できるところではどこでもやっていたようです。ジョンのお気に入りの作曲場所はトイレだったという噂もあります。
作詞に関しても、思い浮かんだフレーズを忘れないように、レシートやたばこの箱、写真などに殴り書きをしていた様子。まさしく寝ても覚めても作詞・作曲。日常にあるいろんなものから力を借りたくなるもの分かりますね。
以上、意外な方法で作られたビートルズの楽曲 8選でした。
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もう少しビートルズを詳しく知りたい方は、歴史を押さえておきましょう。10分で分かるバージョンを用意しております。そして、忘れちゃいけない名曲ぞろいのシングルの歴史もあります。
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