ジョンレノンが大好きなビートルズの曲 9選(自作の曲を自己評価)

ジョンレノン

ビートルズ随一の辛口批評家ジョンレノン。自分で作った曲にもすこぶる厳しいのです。でも、すべての曲を駄曲認定しているかというとそうではなく、中にはお気に入りの曲もあるようです。今回は、そんなジョンレノンが「いいね」ボタンを押したと言われるビートルズの作品を4つに分けて紹介します。ラインナップはこちら。

  • ジョンレノン自身について歌った2曲
  • もう一度、レコーディングをしたいと思った曲
  • シンプルに音楽として好きな5曲
  • 歌詞が好きな1曲

9曲あります。これらの曲について、ジョン自身がどう思っていたのか。できるだけジョンのコメントを交えながら紹介します。それではさっそく!

YouTubeもやっています。ぜひ、見てください。

ジョンレノン自身について歌った曲が好き

まずは、ジョンが自分について歌った作品を紹介します。ビートルズ時代から非常に歌詞にこだわってきたジョンが、リアルな曲と述べている2曲です。両曲ともにジョンの代表作ですねー。

想像を超える出来事の中で叫んだ言葉 Help!

1曲目はアルバム『Help!』のタイトルナンバー Help!です。これまで恋愛をテーマに曲をリリースしてきたビートルズがシングル10作目にして「恋愛じゃない」曲を生み出します。もともとは主演映画のために作られた1曲で、ジョン自身もそういう位置づけでつくった曲だったそうです。でも、後になって振り返った時、Help!は心の叫びだったと述べています。

But later, I knew I really was crying out for help. (でも後になって自分が本当に助けを求めて叫んでいたことに気づいたんだ。)

この曲をリリースしたのが1965年の7月。前年にアメリカを制覇し、世界中でビートルズ旋風が巻き起こっていたころです。「The whole Beatle thing was just beyond comprehension. (ビートルズにまつわることは理解をはるかに超えるものばかり)」で、ジョンは自分自身を見失いつつあったといいます。その中で叫ばれたのが、この曲 Help!だったわけです。

想像するに、若きころに思い描いていた未来像との乖離、「こんなはずじゃなかった」という思いがジョンを悩ませていたのかもしれません。自由を得たくてロックンローラーになったのに、いろいろなしがらみで自由じゃない…みたいな。

そう考えると、この時の状態を「So it was my fat Elvis period.(太ったエルヴィス状態)と表現するのも何となくわかる気がしますね。この太ったエルヴィスとは、ラスベガス時代のプレスリーのことでしょうか。映画や書籍で知る限りですが、晩年に契約で身動きがとれなくなってしまった少年時代のヒーローの姿と自分の姿とを重ね合わせ、憂いています。

ジョンの心の叫びであった Help!は、テーマこそ少々重いものですが、サウンドは軽快なロックンロールです。ジョンのボーカルにポールマッカートニーとジョージハリスンの凝ったコーラスが加わり、楽しいビートルズを演出してくれています。ということでHelp!でした。

幼少期の体験を歌った曲 Strawberry Fields Forever

2曲目は14作目のシングル Strawberry Fields Forever です。ポール作の Penny Lane と両A面シングルとして1967年にリリースされています。ビートルズの作品の中でも屈指の名曲と評価の高い作品ですが、意外にもシングルチャートでNo.1 を記録していません。不思議ですね。

私が作った本当の歌は、Help!とStrawberry Fields Forever だけです。

1970年のローリングストーン誌のインタビューでジョンはこの曲についてこのように言っています。「本当の歌」というのは、一人称の音楽ということ。つまり自分自身について歌った作品のことです。ジョンはそういう音楽が好きなんですね。

このインタビューで、ジョンは勢い余って「三人称的な歌を作るのが楽しかったことがない」とも言っていますが、ここについては私は「怪しい」と思っています。

ともあれ Strawberry Fields Forever です。制作の出発点は「幼少期をテーマ」に曲を作ることでした。そうして出来上がったのがこの曲とポールの Penny Lane です。両曲ともにビートルズのメンバーが少年時代を過ごしたリバプールの地名が曲のタイトルになっています。Penny Lane は通りの名前で、Strawberry Fields はジョンの家の近くにあった孤児院の名前。今やリバプールに二大観光地となっていますね。

ジョンは幼少の頃、この孤児院にいってよく遊んでいたらしく、曲では「Nothing to get hung about / 気にすることなんて何ものない」場所の象徴として描かれています。歌詞を見てみると、非常に抽象的で多様に解釈ができそうです。さて、ジョンの真意はどうだったのでしょうか。

I was different from the others. I was different all my life.(私は他の人と違っていました。変わり者でした。)

この曲の歌詞の解釈として、1980年にこのように言っています。ジョンくらいになると、幼少期のころから、他人とは何かが違うという意識があったのだと思います。天才性みたいなことなのかもしれませんね。

ただ、ジョーカー、ジョンレノン。真意はまったく別にある可能性も大です。私は個人的解釈としてこの曲を「おねしょの歌」だと思っていますが、いかがでしょうか(詳細はここをクリック!)。ということで、Strawberry Fields Forever でした。ジョンは自分のことを歌った作品として、他にも I’m a Loser や In My Life をあげていますが、今回はこの2曲で。

もう一度レコーディングしたかったほど好き

続いては、ビートルズ解散後にジョンが「もう一度レコーディングしたい」と語った曲を紹介します。私の記憶が確かなら、Help!やStrawberry Fields Forever、(I Am The Walrus もかな) も再レコーディングに言及にしていますが、ここでは次の1曲を紹介します。

世界中がビートルズに振り向いた I Want To Hold Your Hand

ビートルズ5作目のシングル I Want To Hold Your Hand。邦題は「抱きしめたい」です。ジョンとポールの完全共作は意外と少ないのですが、この曲は完全なる共作。ビートルズがアメリカ、世界で人気を得るきっかけとなった作品ですね。

『抱きしめたい』も好きです。ポールとふたりで作ったのです。美しいメロディです。『抱きしめたい』と『ヘルプ』はもういちどレコードにするかもしれません。好きだからです。

ジョンにしては珍しく高評価。それもけっこう高めの評価です。この発言は1970年のインタビューの時のもの。つまりビートルズ解散直後です。そんな中でも 再レコーディングに言及していることを考えるとそうとうに好きだったに違いありません。

でも、なぜもう一度レコーディングしたかったのでしょうか。

Help!に関しては「テンポが早すぎます。コーマシャルにしようとしている。」と言っているので、それが理由じゃないかなと思います。では、I Want To Hold Your Hand はどうなんでしょう。同じ文脈で語られているので、理由は同じなのかなーなんて思いますが、どうなんでしょうか。知っている方がいらっしゃれば教えてください。

一方、共作者のポールはこの曲をどう思っているのでしょうか。いろいろと調べてみましたが、完全共作である点に触れているばかりで、好き嫌いに言及しているものはなさそうです。さて、どう思っていたのでしょうかね。

個人的に不思議に思うのは、ポールがこの曲をコンサートで取り上げてくれないこと。ポールは自分のコンサートでよくビートルズの曲を演奏してくれますが、I Want To Hold Your Hand の演奏は私の知る限りありません。あれだけのヒット曲なのに取り上げないのは何か理由あってのこと…?特別な思い入れがあるからでしょうか。以上、独り言でした。

ともあれ、I Want To Hold Your Hand です。音楽の歴史にビートルズという名を刻印したこの曲。この曲がきっかけで世界はビートルズのとりこになるわけです。そんな曲をジョンがお気に入りでいてくれてよかった!ファンとしては素直にそう思います。

シンプルに音楽として好き

続いては、確かに「お気に入り」だと言っているけど、分類が難しい楽曲を紹介いたします。けっこうたくさんあるのですが、ここでは5曲に厳選してお届けします。

もっとも初期のヘヴィメタルレコード Ticket To Ride

まずは9作めのシングルのこの曲、Ticket To Ride です。アルバム『Help!』にも収録されています。個人的な感想で恐縮ですが、ビートルズがこれまでにリリースしたシングルの中では、キャッチー度が少々低めです。軽快な感じというよりは重厚という印象です。

["Ticket to Ride" was] one of the earliest heavy-metal records made. ( もっとも初期のヘヴィメタルレコードだ。)

ジョンレノンがこう語るように、やはりサウンドは重厚です。控えめなジョンはこれを「ほんの少し新しいサウンド」として表現しています。そしてこの「新しいサウンド」がジョンのお気に入りの理由でした。

当時としては、ヘヴィだったのです。ほかの人たちがやっていた音楽を、当時のヒット・チャートからひろってくらべてみると、わかります。いま聞きなおしても、それほどわるくないのです。

ビートルズの曲を含め、当時の音楽シーンにはなかったサウンドだったのだと思います。そこがジョンのお気に入り。特にリンゴスターによるドラムのサウンドを好んでいたようです。

この曲のドラミングのすごさは有名ですねー。このドラムのパターンは、ポールのアイデアだそうです。さすがポールです。ということで Ticket To Ride でした。

ビートルズ楽曲の頂点 A Day In The Life

続いては奇跡の名盤『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』のエンディングを飾る A Day In The Life です。ジョンとポールの共同作品で、別々に作っていた曲を合体させて最高傑作に仕上げています。個人的にこの曲がビートルズの作品の中でもっとも偉大だと思っているのですが、みなさんいかがでしょうか。おそろしいほどの名曲です。もちろんジョンレノンもお気に入り。

It was a good piece of work between Paul and me. ( ポールと一緒にいい仕事をしたよ。)

と、このようにお気に入り認定です。自分が好きな曲を作者のジョンがお気に入り認定してくれているのは、ファンとして嬉しいですねー。

I needed a middle-eight for it, but Paul already had one there.( ミドルエイトが必要だったんだけど、ポールがそこに合うのを持っていたんだ。)

こんなふうにポールの仕事に感謝しているのもなんだか感激です。ジョンの部分だけでも十分に名曲な感じがしますが、やはりポール作のあのミドルエイトがあるからこその A Day In The Life だと思います。もちろん、もうひとりの作者、ポールもこの曲を絶賛しています。

『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』を世紀の名盤たらしめているのはこの曲の存在がかなりの部分を占めると思っているのですが、いかがでしょうか(興味があればこちらもクリック!)。ところで、中間部分のオーケストラ後の「あぁ~あぁ~」問題について。ジョンの声説、ポールの声説とありますが、どちっだと思いますか。私は、ジョン説に一票です。

100年たっても飽きない何かがある I Am The Walrus

アルバム『Magical Mystery Tour』に収録されているこの曲です。サイケデリックサウンドバリバリの曲。タイトルを日本語に訳すと、「私はセイウチです」。ちょっぴり意味不明ですが、名曲であることは間違いなく、ジョンのお墨付きです。

100年たっても飽きない何かがある。

ジョンはそう語りますが、私はここに異論を唱えたいと思います。1000年です。たぶん人類はこの曲に飽きません。まあ、とにかく良い曲なわけです。個人的に、Strawberry Fields Forever と双璧をなすビートルズのサイケデリックサウンドの最高峰楽曲の1曲だと思っています。

ジョンもこの曲に自信を持っておりシングルのA面としてのリリースを熱望していました。ただ、ジョン以外のビートルズサイドの決断は、ポール作の Hello, Goodbye がシングルのA面。I Am The Walrus はそのB面でのリリースになります。

『ハロー・グッドバイ』のB面です。信じられないでしょう。

1970年のインタビューでこう語るほど、ジョンは悔しい想いをしています。悔しすぎてA面の Hello, Goodbye をちょっと嫌いになったりしています。ともあれ、ジョンにとって思い入れがある曲であることは間違いなく、後にリリースする Glass Onion やソロ作品の God といった作品の歌詞に Walrus を登場させています。

個人的にはポールの Hello, Goodbye も100年たっても飽きない何かがあると思っています。いずれにしてもこのシングルのクオリティはスゴイ!

あらゆる種類のロックを体験できる Happiness Is A Warm Gun

続いては『ホワイトアルバム』収録のこの曲です。聞けば分かりますが、もともと別々に作っていた曲を合体させて1曲にまとめて仕上げた作品となっています。そういうとなんだかツギハギだらけの違和感ある曲?かと思ってしまいますが、その完成度は非常に高いわけです。

私の最高のできの歌のひとつです。この歌を忘れていましたね、ほんとうに好きなのです。美しい歌だと思います。

ジョンもこう言っています。好きな理由は「あらゆる種類のロック・ミュージックを体験していうくような感じがある」から。確かにこれほどまでに目まぐるしく展開するのは、ビートルズの楽曲やソロ作品を含めてもこの作品くらいかな。あえて言うならポールの Band On The Run くらいでしょうか。

Happiness Is A Warm Gun はビートルズのメンバー全員のお気に入り楽曲で、もちろんポールもこの曲をお気に入りにあげています。「歌詞が素晴らしい」ともいい「かなり複雑な曲だね。とてもジョンらしい曲だ。」とも語っており、大絶賛です。もしかしたら Band On The Run の制作に影響を与えたのかも…、なんて思う今日この頃です。

踊れるぜ、買いだ! Come Together

涙のラストアルバム『Abbey Road』のオープニングナンバー Come Together です。ジョンレノン節炸裂の歌詞で、意味は全く不明。再販されたアナログ盤の歌詞カードに対訳不可能と書かれていたほどです。

4つのバースからなる歌詞は、ビートルズのメンバーについて書かれたものという説がありますが、はたしてどうなんでしょうか。その説によると、1バース目はジョージ、2つ目はポール、3つ目はジョン自身、4つ目はリンゴスターについて歌われたものらしいです。

この曲もジョンのお気に入りです。

It’s one of my favorite Beatle tracks, or, one of my favorite Lennon tracks, let’s say that. It’s funky, it’s bluesy, and I’m singing it pretty well. I like the sound of the record. You can dance to it. I’ll buy it!(ビートルズの作品の中でも特に好きな曲、いやレノンの作品の中でも好きな作品だ。ファンキーでブルージー、それに上手く歌えてる。サウンドが好きなんだ。踊ることもできるぜ、これは買いだ!)

シンプルに好きなのが伝わってきますね。確かに、あまりキャッチーではないけど、ハマる何かがある曲です。イントロのベースもまた良い。かなり印象的ですよね。このベースについてジョンも「なかなかできないよ」と褒めています。

それにしてもこの歌詞です。ナンセンスなジョンレノンセンスです。これ、英語圏で暮らしている人たちはどういう印象を受けているでしょうか。聞いてみたいところです。きっと、日本語圏に住む私とは違った印象を受けていると思います。ということで Come Together でした。

歌詞が好き

ナンセンスな歌詞の曲が出てきたところで、最後はジョンレノンが歌詞が好きだと言っている曲を紹介します。言ってみれば Help!も Strawberry Fields Forever も歌詞がお気に入りなんだと思いますが、ここで紹介するのは自分のことじゃないことを歌った歌詞の曲です。

メロディ抜き、歌詞単体でも成り立つ曲 Across the Universe

この曲は、1967年のビートルズインド傾倒期に書かれたジョンの最高傑作のひとつです。初めてリリースされたのが1969年のチャリティアルバム『No One's Gonna Change Our World』です。そしてビートルズの公式アルバムは、『Let It Be』にバージョン違いが収録されています。

It's one of the best lyrics I've written. In fact, it could be the best. It's good poetry, or whatever you call it, without chewin' it. See, the ones I like are the ones that stand as words, without melody. They don't have to have any melody, like a poem, you can read them. (今まで書いた歌詞の中でも特に良い歌詞だ。実際、最高傑作かもしれない。いい詩なんだ。俺が好きなのは、メロディを抜きにして、歌詞単体で成立するもの。メロディがなくても詩のように読めればいいんだ。)

この曲についてジョンはこう語ります。歌詞についてはかなりのお気に入りです。英語をよくわかっていない私が聞いても何となく美しい歌詞であることは伝わってくるのがスゴイところ。言語を超えてきます。

ただ、ジョン自身、歌詞は気に入っていたけど、「録音が上手くいかなかった」と言っています。納得できるサウンドが出せなかったのでしょうね。この曲には公式にリリースされているだけでもかなりのバージョン違いが存在します。試行錯誤してベストバージョンを探していたけれど、結局、辿りつけなかったのかもしれませんね。

ちなみに、歌詞に登場する Jai Guru Deva Om… はサンスクリット語で「神に感謝」という意味らしいです。ということで Across The Universe でした。

厳しいことは言うけれど、けっこうビートルズが好きなジョンレノン

ジョンが作った曲を中心に、「ジョンレノンが好きなビートルズの曲」を紹介してきました。ここで紹介したのは、この9曲です。

  • Help!
  • Strawberry Fields Forever
  • I Want To Hold Your Hand
  • Ticket To Ride
  • A Day In The Life
  • I Am The Walrus
  • Happiness Is A Warm Gun
  • Come Together
  • Across the Universe

けっこうたくさんありますね。傾向として、曲に込められたメッセージに真実味があるかどうかで、ジョンは好き嫌いを判断している気がします。ここであげたのは9曲ですが、探せばまだまだあると思います。ここに加えて、ポールが作った曲、ジョージが作った曲でのお気に入りもあるでしょうから、その曲数は多くなりますね。

なんだ、厳しきこというけど、けっこうビートルズのこと好きなのね。

そんな感じの感想です。まあ、自分で作ったバンドなんで、当たり前と言えば当たり前か。以上、「ジョンレノンが大好きなビートルズの曲 9選(自作の曲を自己評価)」でした。おしまい。

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コメント

  1. 渡 祥浩 より:

    いいセンスしてますね

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