冒頭の1秒で心奪われる!ビートルズ「声」が主役の神曲5選

ジョンレノン

ビートルズの楽曲には、私たちの心を一瞬で掴む“特別な瞬間”があります。イントロです。特に、伴奏がなく、歌声だけで始まるイントロは、たまりません。楽器の助けを借りず、いきなり歌声だけが響く。――聴く人の意識をグッと引き寄せ、物語の入り口に立たされるような感覚です。

この“声から始まる”演出は、ビートルズの音楽においてただのテクニックではないような気がします。メンバーそれぞれの個性や楽曲が伝えたい感情を、ダイレクトに表現する重要な要素です。優しい声でそっと語りかけるように始まるものもあれば、力強く叫ぶようにして物語を切り開くものもあり、最初の一声が、聴く者の心に物語の扉を開く合図となるわけです。

そこには少しの“緊張感”が漂います。その後に続く音楽の豊かさを際立たせ、聴き手を深い世界へと引き込みます。その演出が、ビートルズの音楽をより一層特別なものにしているのです。

ここで、ご紹介するのは、そんな“歌声が主役”の楽曲たちです。伴奏なしで、どかん!と歌声から入るが曲です。これらの楽曲には、どんな思いが込められ、どんなドラマが展開されているのか。その秘密に触れることで、さらにビートルズ体験を豊かにしようとする試みです。

それでは、さっそく!

All My Loving

外せない楽曲ですね。「All My Loving」です。ポール・マッカートニーのリードボーカルで始まる初期ビートルズの代表曲だと思います。この曲が収録されているアルバム『With The Beatles』はイギリスのアルバムチャートで1位を獲得し、21週間にわたってチャートインを続けるという偉業を達成しています。また、この曲は、ビートルズがアメリカでの成功をつかむきっかけの一つでもあり、特に1964年2月の『The Ed Sullivan Show』での演奏後に人気が急上昇しました。

「All My Loving」の作曲はポールによるもので、当時、遠く離れた恋人に手紙を書くような感覚で歌詞を書くことを考えており、その結果生まれたのがこの曲。曲より先に歌詞を書いた初めての作品とのことです。録音は1963年7月30日にロンドンのEMIスタジオで行われました。

曲の構成は、まずポールのボーカルでスタートし、その後、ジョン・レノンのリズムギターが加わり、曲全体に躍動感を与えています。このジョンによる三連符を丁寧に刻むリズムギターは最高ですね。間奏では、ジョージ・ハリスンのカントリーチックなギターソロが登場し、曲に新しい魅力を加えています。リンゴ・スターのドラムもまた良い!軽快なシャッフルビートで、曲にリズミカルな躍動感を与えています。

まあ、なんといっても注目すべきは、無伴奏イントロではないでしょうか。聴き手の注意を一気に引きつける方法として効果抜群です。このような無伴奏イントロは、当時のポップミュージックではまだ珍しかったのではないでしょうか。特にラジオでの放送時に強い印象を与えていそうです。無伴奏イントロから楽器が順次加わっていく展開は、音楽的な魅力を引き出していると思いませんか?_音楽評論家のイアン・マクドナルドも、この曲のシンプルで純粋なポップ感覚を高く評価し、60年代初頭のイギリスのポップミュージックの代表的な作品として言及しています。

2000年以降も、この曲の評価は衰えることがありません。現代においても、この曲のイントロのアレンジ手法は頻繁に取り上げられており、強烈なインパクトを残したビートルズ楽曲のひとつとして語り継がれています。

If I Fell

1964年7月10日、アルバム『A Hard Day's Night』に収録された「If I Fell」は、ジョン・レノンが中心となって作曲したバラードです。この楽曲は、同名映画の中でも印象的に使われており、ジョンとポールの二重唱で始まるイントロが特徴的です。イギリスではシングルカットされていませんが、されていたら爆売れ間違いなしの作品だと思います。

制作の背景には、ジョンの内面的な思いが反映されています。レノン自身が1980年のインタビューで「初めてバラードに挑戦した曲で、感傷的なラブソングを書いた」と述べており、個人的な感情を込めた作品であったことが伺えます。

レコーディングは、1964年2月27日にEMIスタジオで行われました。さすがのレノンマッカートニーも苦戦したのか、この曲のキモであるイントロの二重唱部分には時間をかけたと記録されています。ジョンとポールの声が絶妙に絡み合うこのイントロは、この曲の大きな魅力です。

この曲は、比較的ゆったりとしたテンポで、調性はD♭メジャーで始まり、途中でDメジャーに転調する構造を持っています。AABA形式を採用し、メロディラインは下行形を基本にして展開されています。無伴奏の二重唱から始まる12小節のイントロは、ハーモニーの美しさが際立ち、楽曲全体の基調を作り上げています。この曲について、評論家たちの評価も高く、「If I Fell」はジョンの初期の傑作の一つとして評価されています。メロディの展開やハーモニーの使い方が秀逸であると指摘されています。

演奏の難しさも、この曲の特徴の一つのようです。特に、イントロ部分のハーモニーは、音程の取り方が非常に難しく、ライブでの再現が困難でした。1964年の北米ツアーでは、イントロ部分を単独のボーカルに変更して演奏することもあったようです。演奏の難しさにも関わらず、この楽曲は様々なアーティストによってカバーされています。それは名曲の証なのかもしれませんね。多くのミュージシャンがこの曲に新たな解釈を加えてして、そういうのを聞くのも結構楽しかったりもします。

I Will

1968年11月22日、『ホワイト・アルバム』(正式名称:The Beatles)に収録された「I Will」は、ポールによって作られた楽曲です。この曲も伴奏なしのボーカルから始まりますね。優しいメロディが特徴的です。この曲の原型は、インドのリシケシュに滞在中に作り始めたと言われています。当初は異なる歌詞を試みていましたが、現在の形に仕上がるまでに数ヶ月の推敲が重ねられました。後年、マッカートニーは「メロディはすぐに思いついたが、歌詞を作るのに苦労した」と述べています。

録音に際しては数多くのテイクが重ねられ、最終的にどのテイクが採用されたのかは記録に残っていないようです。演奏は、ポールがアコースティックギターとリードボーカルを担当して、ジョンが打楽器、リンゴはドラムを担当しています。ベースはポールによるもので、なんとあのベースの音はポールの声です。最終ミックスではシンプルなアレンジを心がけ、必要最低限の要素のみを取り入れました。

この曲が制作された1968年はビートルズ内部の関係が徐々に悪化し始めていた時期ですが、「I Will」の録音セッションは和やかな雰囲気で進められたと言われています。ポール自身も「この曲を作ることで自分の心を落ち着かせることができた」と振り返っています。

優しいメロディとシンプルな構造が特徴なこの曲は、やっぱり名曲ですね。ファンはもちろんのこと、多くの音楽評論家から高い評価を受けています。「ポールーのソングライティングの才能を存分に示した曲」として絶賛されることもあったようです。「シンプルながらも完成度の高い愛」といったところでしょうか。「Yesterday」といい「Blackbird」といい、ポールにこういう曲を書かせたら超一流ですね。カバーも多く存在しており、アーティストが持つ独自の解釈で異なる魅力を引き出しています。

Hey Jude

忘れてはいけない「Hey Jude」です。壮大なこの曲の始まりは、ポールのボーカルのみではじまります。1968年8月26日にシングルとしてリリースされたこの曲は、ビートルズの最大のヒット曲です。作曲はポールで、ボーカルもポールです。この曲はリリース後すぐにイギリスのシングルチャートで1位を獲得しています。アメリカでも同様にチャート1位を獲得し、9週間連続で1位を記録。世界全体では推定1300万枚以上の売上を記録しているようです。世界4位の売り上げだそうです。

制作背景には、ジョンの息子ジュリアンへの励ましが込められているのは有名な話ですね。ジョンとその妻シンシアが離婚のことで揉めている際に、ポールはジュリアンを気遣い、「Hey Jules」という曲を書き始めました。その後、曲名は「Jude」に変更されましたが、励ましのメッセージはそのまま生かされています。ポールは優しいですね。

最初のデモ録音はEMIアビーロードで行われ、正式な録音はトライデント・スタジオで行われました。演奏時間は7分11秒と、当時のシングルとしては異例の長さを誇ります。イントロはピアノとボーカルのみのシンプルな構成で始まり、コーダ部分の「Na Na Na」というフレーズは4分以上続き、壮大な展開を生み出しています。コーダ部分には、スタジオにいた関係者やファンも含まれる多くのコーラス隊が参加したのだとか。

この曲「Hey Jude」は、発売当時から現在に至るまで、一貫して高い評価を受け続けています。『ローリング・ストーン』誌の「500グレイテスト・ソング・オブ・オールタイム」では8位に選ばれ、NME誌でも「1960年代の最も影響力のある曲」の一つとして評価されています。また、グラミー賞にもノミネートされています。余談ですが、ビートルズって実はあんまりグラミー賞と縁がないんですよね。ノミネートはたくさんされていますが、受賞はそれほどでもない。うーん、何ででしょうか。

この曲の音楽史における意義は、7分を超える長さのシングルとしての成功や、大規模なコーラスの使用、そしてスタジオ録音技術の新たな可能性の提示などにあります。コーダ部分での観客との一体感は、後のライブパフォーマンスのスタイルにも影響を与えました。また、長尺の楽曲でもヒットすることを証明した点は、後のプログレッシブ・ロックの発展に大きな影響を与えたとも考えられます。

2012年にはロンドンオリンピックの開会式でも使用されるなど、時代を超えて親しまれ続ける「Hey Jude」は、その影響力が今も衰えることがありません。BBCの調査でも「最も多くの人が知っている英語の楽曲」の一つとして挙げられるなど、その評価は広く認められています。

Paperback Writer

最後は、Paperback Writerです。3人の美しいコーラスで始まります。最高です。1966年6月10日にシングルとしてリリースされたこの曲は、ビートルズのクリエイティブな転換点を象徴する楽曲だと、私は思っています。作曲はポールが中心。リリース後、イギリスやアメリカを含む世界各国のチャートで1位を獲得しています。この頃からビートルズのサウンド、特にベースが分厚くなってきます。

「Paperback Writer」の歌詞は、成功を夢見る作家が出版社に自分の小説を売り込むというユニークなストーリーを描いています。この曲の制作にあたって、誰からどんなカタチでインスピレーションを受けたのか、諸説あるようですが、そのひとつに、ポールが叔母から「なぜラブソングばかりなの?」と言われたから、というのもあるようです。いずれにしても、ビートルズがこれまでのラブソング中心の楽曲構成から脱却し、物語性や社会的テーマを取り入れ始めた象徴的な作品であることは間違いありません。

演奏面での特徴は、ポールのベースが強調されているところでしょうか。、ファズの効いた重厚なサウンドが楽曲全体にわたって印象的に使用されています。これは、エンジニアのジェフ・エメリックがポールのリクエストに応じて、低音を際立たせるためにミキシングを工夫した結果なのだとか。

イントロでは、あの印象的な歌声の後に、ギターとベースが勢いよく入ってきます。いわゆるここで、ファンは痺れるわけですね。シンプルなコード進行ではありますが、ボーカルハーモニーやリフの繰り返しが独特のグルーヴ感を生み出しています。コーラス部分では、ジョンとジョージによるハーモニーが際立ち、曲に奥行きを与えています。特に「Frere Jacques」を引用したバックボーカルは、遊び心に満ちたアレンジとして注目です。

リリース当時、『Paperback Writer』はビートルズの新たな方向性を示すものとして高い評価を得ました。シングルはイギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど多くの国でチャート1位を記録。音楽評論家たちは、シンプルながらも斬新なリフ、重厚なベースサウンド、そしてストーリー性のある歌詞のバランスが絶妙であると評価しました。

この曲は、ビートルズがサウンドの実験とテーマの多様化に踏み出した瞬間を象徴しています。特に、リフ主導のロックサウンドは後のハードロックやパワーポップの先駆けとなり、音楽史に大きな影響を与えたものと思われます。また、物語を軸にした歌詞は、彼らがアーティスティックな表現に重点を置き始めたことを示しています。時代を超えた影響力は、現在でも『Paperback Writer』がさまざまな場面で取り上げられていることからも明らかです。多くのカバーバージョンが存在し、ライブでも頻繁に演奏されるこの楽曲は、今なおビートルズの革新性を象徴する存在ですね。

All You Need is The Beatles' Voices

歌声だけで始まる瞬間って、何とも言えない特別な感じがします。伴奏がない分、歌声の温かさや質感がダイレクトに伝わってきて、あっという間にビートルズの世界に引き込まれてしまいます。ビートルズ楽曲が持つ“語りかける力”が一番感じられる瞬間だと思います。

1発目の歌声だけで、曲の持つ雰囲気を伝える。これがビートルズのすごさであり、時代を越えて今なお世界中を魅了し続ける理由だと思います。歌声だけのイントロ、何度聴いても新しい発見があります。ビートルズの音楽は、楽器やメロディの美しさも素晴らしいのですが、歌声も忘れてはいけない魅力ですね。むしろ、1番の魅力かもしれない。そんなことを最近思っています。

歌声が表現する力こそが、ビートルズの音楽の核なのかもしれません。いろいろと考えているうちに、私の中でビートルズの新しい扉がまた開いた気がします。ぜひ、“歌声から始まる”楽曲に耳を傾けて、新しいビートルズを探してみてください。

以上、「冒頭の1秒で心奪われる!ビートルズ「声」が主役の神曲5選」でした。おしまい。

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