2023年にリリースされたビートルズのベスト盤「赤盤」と「青盤」には、なんと75曲が収録されています!ベスト盤といえば、良い曲をかき集めたものだと思うんですね、それがなんと75曲もあるわけです。
ちなみにビートルズが活動期間中に公式にリリースした楽曲は213曲です。そのうち、ベスト盤に選ばれたのが75曲!「Now and Then」を引いても74曲です。これは全体の約35%にあたります。そうです。ビートルズの楽曲はほとんどベストなのです。
それでもなお、「あの曲が入っていないのはなぜ?」「こんな名曲が外れるなんてあり得ない!」と思わせてくれるのが、ビートルズの懐の深いところでしょうか。実際、ベスト盤に収録されなかった曲にも、驚くほど素晴らしい名作が数多く眠っています。
そこでふと思ったわけです。
ベスト盤に入っていない楽曲だけでもベスト盤が作れるんじゃないかと。そんなこんなで、きっちり16曲入りの仮想ベスト盤を作成してみました。曲順にもいちおうこだわっております。かなりの独断と偏見で作成していますので、優しい気持ちで見ていってください。それでは、さっそく1曲目です!
It Won’t Be Long
オープニングを飾るのは、「It Won’t Be Long」。アルバム『With The Beatles』に収められたこの曲は、まさにアルバム全体の勢いを象徴する一曲です。軽快で力強いリズム、そしてジョン・レノンの熱のこもったボーカルが響き渡り、一度聴けばそのエネルギーに引き込まれること間違いなし。オープニングにふさわしい理由、もうこれだけで十分ではないでしょうか。
この曲、実はビートルズ初期の代表的な「コール&レスポンス」が最大の魅力と言えます。ジョンが繰り返す「Yeah!」にポールとジョージが答える構図は、まさにビートルズのライブ感を詰め込んだかのような臨場感。聞いている方も思わず「Yeah!」と言ってしまいそうになるほどのライブ感です。
さらに注目したいのが、歌詞のテーマ。「待ち続けた恋人との再会の喜び」が描かれており、シンプルながらも心に響くメッセージ性があります。ジョンのボーカルからはその喜びがあふれ出し、バックの演奏と絶妙にマッチしているのも魅力の一つです。特にポールのベースラインが曲全体をしっかりと支えつつ、メロディに心地よいリズムを与えている点も聴きどころです。
この曲を最初に聴くことで、一気にビートルズの世界へと引き込まれること間違いなし。短いながらも印象に残る構成で、次の曲への期待感を煽る…そんな役割を担ったこの曲が、オープニングトラックに最適だと思います!
There’s a Place
2曲目は「There’s a Place」です。ビートルズが初期に残した隠れた名曲ですね。この曲はアルバム『Please Please Me』に収録されており、ともすると、B面のただの一曲として扱われがちでしたが、じっくり聴いてみるとその奥深さに驚かされます。歌詞が描き出すのは「心の中にある逃げ場所」。物理的な場所ではなく、自分の心にこそ安らぎを見出すというテーマが印象的です。初期のポップソングとしては珍しい哲学的な視点が見られるところが、この曲の魅力の一つです。
曲全体を包み込む明るいメロディとは裏腹に、歌詞からはどこか内省的な雰囲気が漂います。そのコントラストが聴き手の心を引きつけ、リピートして聴きたくなる中毒性を生み出しているのかもしれません。そして何と言っても注目すべきは、ジョンとポールのボーカルハーモニー。完璧に調和した二人の歌声は、ビートルズ初期の音楽性を象徴していると言えるでしょう。
「アルバム全体に流れる感情の起伏を作り出す」という意味で2曲目にふさわしい曲だと思うのですが、いかがでしょうか。オープニングのエネルギッシュな「It Won’t Be Long」に続いて、この内向的で心に沁みる「There’s a Place」を配置することで、聴き手の感情に変化を与え、アルバム全体の深みを増す役割を果たしてくれます。心の内側にそっと寄り添うようなこの曲を、ぜひじっくりと味わってほしい一曲です。
All I’ve Got to Do
3曲目は、「All I’ve Got to Do」です。この曲は、ビートルズの初期の魅力が詰まった美しい曲であり、今回のアルバムにおける「静かな瞬間」を作り出します。この曲を3曲目に選んだのは、まさに全体のバランスを考慮した結果。最初の2曲がエネルギッシュでアップテンポな「It Won’t Be Long」と「There’s a Place」でリスナーの注意を引きつけた後、少し落ち着いた曲を配置することで、アルバムの流れに変化をもたらし、聴き手にとって一息つける瞬間を提供するからです。
曲の内容は、恋愛における単純でありながらも深い願いを描いており、「ただ君に会いたい」という気持ちをジョンが心地よく歌い上げます。シンプルな歌詞と穏やかなメロディが心にしっとりと染み渡りますが、その中でもしっかりと存在感を放っており、ビートルズ初期の独特な魅力を感じさせます。この曲を3曲目に持ってくることで、アルバムにおける「静」と「動」のバランスを作り出し、聴き手の感情の波をコントロールできるようにしています。
また、シンプルではあるけれど深みのあるサウンドも、この曲の魅力の一つです。バックでのギターやドラムが控えめながらも絶妙な動きを見せ、ジョンのボーカルを引き立てています。どこか懐かしく、温かい気持ちになるこの曲は、次に続く曲に自然に繋がり、アルバム全体の流れをスムーズに進めてくれます。
If I Fell
続いては「If I Fell」です。この曲の美しいハーモニーは、言うまでもなくビートルズの初期作品の中でも際立つ魅力を持っています。それなのに、なぜこの曲が公式ベスト盤に収録されていないのか、不思議でなりません。それほどまでに、この曲はビートルズのバラードの中で特別な位置を占める一曲です。
アルバムの4曲目にこの曲を配置した理由は、感情の流れを意識した構成にあります。冒頭の3曲でエネルギッシュな勢いや優しさを伝えつつも、ここで一旦、より深い感情へとリスナーを引き込む瞬間を作りたかったわけです。この曲が、アルバムの序盤から中盤へ向かう重要な転換点を担っています。
歌詞は、恋愛における不安や信頼への葛藤を描いており、ジョンとポールが交互に歌うパートは、まるで二人が対話しているかのような絶妙なバランスを生み出しています。特に、サビで二人のハーモニーが溶け合う部分は、この曲の最大のハイライト。ビートルズの初期作品の中でも、ここまで二人のボーカルが繊細に重なり合う曲は稀で、聴くたびにその美しさに心を奪われます。
この「If I Fell」が4曲目に位置していることで、アルバム全体にしっかりとした感情的な重みが加わり、次の曲への期待感も自然と高まります。この配置は、アルバム全体の物語性と感情の移ろいを際立たせる大きな役割を果たしているのです。
Tell Me Why
5曲目は「Tell Me Why」を選びました。初期ビートルズのポップでエネルギッシュな一面を象徴する曲ですね。この曲を5曲目にもってきた理由は、これまでの流れを引き締めるためです。アルバムが進行する中で少し感情的な深みを見せてきた後、ここで再び元気なエネルギーを与える役割を果たしています。これにより、アルバム全体の感情のバランスを保ちつつ、リスナーを引き込む力強い瞬間を作り出しています。
歌詞は、恋愛における嫉妬や誤解をテーマにしており、ジョンが力強く歌い上げるその声は、聴き手に強いインパクトを与えます。「Tell Me Why」のサウンドは、非常に効果的にドラムのリズムとギターが絶妙に絡み合いながら、ポップなエネルギーを生み出しています。この曲のアップテンポな雰囲気が、次の曲へと続く感情的な盛り上がりを準備するため、ここに配置しています。
また、この曲が持っているエネルギー感は、アルバム全体の「軽快さ」と「明るさ」の要素を再び感じさせてくれます。アップテンポでありながら、どこか切ない要素を感じさせるのが、「Tell Me Why」の魅力です。
The Inner Light
次はジョージの「The Inner Light」です。この曲は、ビートルズの中でも独特な一曲であり、アルバムの6曲目に位置させることで、さらにその異質感が際立つようにしました。この曲が持つ、インド音楽的なリズムや哲学的な歌詞は、ビートルズの音楽における多様性を象徴しています。アルバムが進行してきた中で、ここで少し方向を変えた変則的な音楽を持ってくることで、リスナーに新しい刺激を与え、これまでの流れに変化をもたらすのが狙いです。
歌詞は、内面的な探求とスピリチュアルな要素を描いており、ジョージならではの東洋的な哲学が色濃く表れています。インド楽器の使用や、オリエンタルなサウンドが特徴的で、ビートルズがどれだけ音楽的に幅広い探求をしていたかを感じさせてくれます。音楽的にはシンプルながらも、ジョージの歌声と相まって、聴くたびに新たな気づきがあるような深みを生んでいます。
「The Inner Light」がこの位置にあることで、アルバムの流れに予測不可能な要素が加わり、リスナーにとって新鮮で驚きのある体験を提供します。この曲が持つ静かな力強さと哲学的なメッセージが、次に続く曲への橋渡しとしての役割を果たし、アルバム全体を深みのあるものにしています。「Tell Me Why」の後のこの一曲が、アルバムの流れに新たな色を加えてくれますし、ビートルズの音楽の多様性を再発見するにはうってつけの楽曲です。
I’ve Just Seen a Face
7曲目には「I’ve Just Seen a Face」を選びました。このタイミングで軽快で爽やかな一曲を挟むことで、アルバム全体にリズムの変化を与え、流れを整える意図があります。感情の深みを感じさせる曲が続いた後、この曲がもたらすフレッシュなエネルギーが、聴き手に一息つかせながらも新たな展開への期待感を抱かせてくれるのです。
この曲は、一目惚れした相手に対する純粋な感情を歌ったもので、ポールの軽やかで生き生きとしたボーカルがその新鮮な気持ちを存分に表現しています。アコースティックギターが中心となったシンプルなアレンジが、曲全体に明るく軽やかなリズム感を与え、聴く者を自然と引き込む魅力を生んでいます。また、メロディの親しみやすさは、思わず口ずさみたくなるほどのキャッチーさを備えており、ビートルズの楽曲らしいポップな魅力が存分に詰まっています。
この曲が持つ軽快さと爽やかさは、次に続く楽曲への流れをスムーズにし、アルバムの中盤に程よいアクセントを加えています。「I’ve Just Seen a Face」のエネルギッシュなサウンドは、これから続く楽曲群への期待を高めると同時に、アルバム全体に心地よいバランスをもたらしているのです。この配置により、リスナーは新鮮な気持ちでアルバムを楽しみ続けることができます。
I’m Looking Through You
アルバムA面の最後を飾るのは「I’m Looking Through You」です。この曲を選んだ理由は、軽快なリズムと感情的な深みを併せ持つ絶妙なバランスにあります。アコースティックギターを主体としたフォーク調のロックサウンドが、これまでの曲とは異なる軽快さをもたらしつつ、歌詞のテーマが持つ切実さが聴く者の心に響きます。この位置に配置することで、アルバムA面の最後にしっかりとした印象を残し、次のB面への期待感を高める効果を狙いました。
歌詞は、恋愛における失望や裏切りをテーマにしており、パートナーとの関係に対する内省的な視点を描いています。ポールの軽快なボーカルとギターのリズミカルな動きが組み合わさり、強いメッセージ性を持つ楽曲に仕上がっています。この対比が、楽曲全体に感情の厚みを加え、表面的な軽快さだけではない深い魅力を感じさせるのです。
また、この曲のテンポ感と感情的なテーマが、アルバム全体の流れにおいて重要な役割を果たしています。軽やかで心地よいサウンドが、これまでの曲の持つ感情の重みを和らげる一方で、歌詞がもたらす深みが次の展開への橋渡しとして機能します。アルバムの前半を締めくくる曲として、「I’m Looking Through You」は、リスナーに強い余韻を残しつつ、後半の新たな展開への準備を整えてくれる存在です。
この曲が持つ独特のエネルギーと感情のバランスは、アルバムのA面を締めくくるのにふさわしいものと言えるでしょう。その軽快なリズムと感情的な深みが織りなす世界観は、アルバム全体のストーリー性をより引き立てています。
No Reply
ここからいよいよBサイドです。Bサイドの最初に選んだ曲は、「No Reply」です。理由は、この曲が持つ独特の感情の深さと、その切なさがアルバム全体の雰囲気をうまく引き締めるからです。ジョンの歌声が、失恋や裏切りの感情を見事に表現しているこの曲は、アルバムの流れの中でも重要な役割を果たします。特に、歌詞の中で「No reply」と繰り返されるフレーズは、絶望と孤独を象徴するような力強さを持っており、聴き手を引き込む強い印象を与えます。
ジョンの歌い方は、鋭い力強さを感じさせます。彼のボーカルは、全体的にクールで抑制的でありながら、歌詞の中で表現される心の葛藤をしっかりと伝えています。その抑えた歌い方が、この曲の雰囲気にぴったり合い、聴いていると心にじわじわときますね。歌詞の中で「あなたが私の返事を無視している」というテーマが繰り返されることで、失恋や無視されたことに対する強い感情が表現され、より一層曲の切なさが際立ちます。
また、この曲のアレンジにも注目したいところです。リズムはシンプルですが、ギターのリフとドラムのタイトなビートが絶妙に絡み合い、曲全体に緊張感と躍動感を与えています。特に、サビに入るときのジョンのボーカルが、一気に感情を爆発させるかのように響き、聴き手を圧倒します。こうした部分が、曲のクライマックスを作り出し、聴く者に強いインパクトを与えるのです。
また、「No Reply」の魅力は、その歌詞の表現力にもあります。「No reply」と繰り返される部分は、相手からの返事がないことに対する絶望感や虚しさを象徴しており、ジョンが体験したであろう切ない心情を見事に反映しています。失恋や恋愛の一方通行な痛みを、ジョン自身がとてもリアルに表現しているため、聴いていると心の奥深くに届くような感覚を覚えます。
アルバムのBサイドの最初にこの曲を持ってくることで、聴き手はまず最初に心を掴まれ、続く曲への期待感が高まります。「No Reply」の切ない世界観が、次の楽曲に向けて聴く者を引き込んでいくため、Bサイドのスタートとして最適な楽曲ではないでしょうか。
I Wanna Be Your Man
続いては「I Wanna Be Your Man」です。そろそろリンゴの声が聴きたくなってきたという理由もありますが、アルバムの流れにエネルギッシュで勢いのあるサウンドを加えたかったことも理由の一つです。この曲は、ビートルズが初期のロックンロールスタイルを鮮やかに表現したもので、シンプルでありながら非常に印象的なメロディとリズムセクションの力強さが特徴的です。
これまでアルバムを聴いてきて、感情的な深みや繊細な表現が続いてきましたが、「I Wanna Be Your Man」をここで持ってくることで、少しテンポを変えて聴き手にエネルギーを与えることができます。リズムが軽快に跳ねるこの曲が加わることで、アルバム全体のバランスが整い、次の展開への期待感を自然に高めることができるのです。
リンゴのボーカルは、この曲の最大の魅力です。彼の無邪気さと勢いを感じさせる歌声に、ジョンとポールのコーラスが絶妙に絡み合い、さらなる魅力を引き出しています。この曲が持つ活気とシンプルさは、アルバムの中で一旦落ち着いたムードを一新し、元気で前向きな印象をもたらす役割を果たします。アルバムの流れに新たなダイナミズムを加えることで、聴き手に心地よいリズムを届け、次の展開に向けた気分を作り上げてくれます。
And Your Bird Can Sing
次は「And Your Bird Can Sing」です。「I Wanna Be Your Man」からの自然な流れを意識しつつも、少し異なるアプローチのエネルギーを感じてもらいたいのが狙いです。ジョンとポールの二人がハーモニーを駆使して歌うこの曲は、聴いていると自然と体がリズムに乗りたくなるような、そんな魅力があります。
「And Your Bird Can Sing」の歌詞は、一見すると軽い感じがするものの、実はその奥に鋭い社会批評を感じさせるものです。ここでジョンが歌っているのは、表面的には恋愛や対人関係のテーマですが、同時に人々の自己満足や虚栄心を批判するような視点が見え隠れしています。彼らが歌う「あなたの鳥も歌える」という表現は、まさに無駄に感じる虚栄心を象徴しているようで、ちょっとした皮肉を込めているのです。
その上で、音楽的にはギターのリフがとても印象的です。このリフが曲全体に張り巡らされており、曲のエネルギーを保ちながら、全体を引っ張っていく役割を果たしています。特に、ジョンのリードボーカルとポールのバッキングボーカルが完璧に息を合わせている点も素晴らしいです。二人の声が交互に入り乱れることで、リズムとメロディに動きが生まれ、聴いていて飽きることがありません。この曲を聴くことで、アルバムの中盤に活気を取り戻し、次の曲への期待を膨らませることができます。
Getting Better
「Getting Better」です。いよいよ終盤です。この曲を12曲目に配置した理由は、この曲が持つ前向きなエネルギーがアルバムの流れを一気に明るくしてくれるからです。「And Your Bird Can Sing」でエネルギーを取り戻した後に、さらにそのポジティブな勢いを加速させる役割を担うのがこの曲です。サビに向かって高揚するメロディが、聴く者に明るい気持ちを与え、アルバムの中でも心地よいクライマックスを作り出します。
この曲では、ビートルズらしいアレンジも光っています。ポールがリードボーカルを務め、軽快なベースラインを担当。ジョージのギターによるリズミカルなカッティングが楽曲全体を彩り、リンゴのタイトなドラムがテンポを力強く支えています。また、ジョンのバッキングボーカルもまた良い!これらの要素が一体となり、曲全体に心地よい一体感を生み出しているのです。
歌詞では、過去の困難や自分の欠点を乗り越え、前向きに成長していく姿が描かれています。ポールが歌う「It’s getting better all the time」という繰り返しのフレーズが、聴く者に元気を与え、希望を感じさせる一方で、ジョンが「Can't get no worse!」と加え、楽曲に誠実さとリアリティをもたらし、ただの楽観主義に終わらないようになっています。
For No One
続いては13曲目「For No One」です。これまでなぜベスト盤に収録されていなかったのか…、ビートルズの7不思議の1つといっても過言ではないでしょう。アルバムの流れの中で、感情的に少し落ち着いた、静かな瞬間を作ってくれる楽曲です。
このバラードはによって書かれ、恋人との別れに伴う深い悲しみが描かれています。ポールのピアノを中心としたメロディと、その歌詞が織りなす力強い感情が絡み合い、非常に印象的で感情的なインパクトを生み出しています。特に歌詞の中で表現される無力感や切なさは、聴く者に深く響き、アルバムの中で次へと繋がる感情的な転換点を作り出します。
演奏面でも、この曲はポールのピアノの旋律が主導し、その上に重ねられる弦楽器が楽曲にさらなる哀愁を加えています。特筆すべきは、バックで響くオーケストラのアレンジで、これが楽曲の感情的な重みを一層強調し、ドラマティックな印象を与えます。ポールの歌声が、曲の切なさや無情さをそのまま伝えることによって、聴き手を引き込み、感動を与えるのです。
13曲目に配置されたことによって、「For No One」はアルバムにおける静かなピークを作り出し、次の曲への橋渡しとしても機能します。曲の持つ深い憂いと、それに続く曲の展開が絶妙に絡み合い、アルバム全体の流れにおける重要な役割を果たしています。
Happiness Is a Warm Gun
「Happiness Is a Warm Gun」を14曲目に選んだ理由は、アルバム全体にガツンとスパイスを入れたかったらですね。「For No One」のような静けさの後に、くるおしいとも言えるほどのエネルギーをもつこの曲が登場することで、アルバム全体の緩急がしっかりとつき、聴き手に強烈な印象を残すのではなかとうかと、計算したわけです。アルバムを決定的に印象付けるエネルギー持つ曲として、「Happiness Is a Warm Gun」は最適な曲だと思いませんか。
ジョンが書いたこの曲は、いくつものセクションが切り替わる複雑な構成を持っています。曲の中で、メロディが突然変化し、リズムも不安定になることで、まさに聴き手を引き込む力を持っています。歌詞は愛や欲望、暴力などさまざまなテーマを暗示しており、聴く者を一瞬で不安にさせる力があります。また、ビートルズらしいポップでキャッチーなメロディと、曲が持つ暗い雰囲気のギャップが絶妙で、聴いていて引き込まれること間違いなしです。
演奏面でも、ギターのリフやドラムの迫力、そしてジョンの力強いボーカルが曲全体に力を与えています。アルバム全体の流れを考えると、終盤にこのようなエネルギー満載の曲が登場することで、聴しびれることまちがいなし!聴き終わった後には、余韻を残しながらも強烈な印象が心に響くことでしょう。
Your Mother Should Know
ラスト目前の一曲、「Your Mother Should Know」です!これも、なんでベスト盤に入らなかったのか不思議で仕方ありません。この曲の軽やかさと、どこか懐かしい雰囲気がアルバム全体のバランスを絶妙に整えてくれますね。特に、アルバム後半のこのタイミングで入ることで、気分をリフレッシュしてくれる小休止のような役割を果たしています。ビートルズならではの明るさと遊び心が詰まった一曲で、聴いていると自然に体がリズムに乗っちゃいますよね!
この曲は、ポールが古き良きポップミュージックへの愛を込めて作曲したもの。どこかミュージカルっぽい雰囲気もあって、聴き手に楽しい情景を思い浮かばせる力を持っています。歌詞には「母親世代が知っている音楽」を肯定する温かさと、ちょっとしたユーモアがあふれていて、そんな親しみやすさが聴く人をほっと和ませてくれます。そして、曲全体を包み込むコーラス!これがまた最高で、ビートルズならではのハーモニーが心地よさを倍増させてくれます。
さらに、演奏面ではピアノを中心にしたシンプルなアレンジが印象的。軽やかなリズムとメロディが絶妙に絡み合っていて、「気負わず楽しめる」というのがこの曲の魅力です。そんな軽快さが、アルバムの終盤にいいアクセントを加えています。
「Your Mother Should Know」がこの15曲目に配置されていることで、全体のトーンが一時的に和らぎ、最後の盛り上がりへ向けた準備ができます。ちょうど良いタイミングで一息つける感じですね。そして、ここから次の最後のへと自然につなげていきます。
Because
最後を飾るのは「Because」。この曲、まさにアルバムの締めにふさわしい一曲ですよね。深遠で夢幻的な世界観が広がるこの曲は、美しいハーモニーがとにかく圧巻で、聴き手を現実から引き離し、夢の中に漂わせてくれるような力があります。ラストにこんな曲を配置することで、アルバム全体のテーマが静かに収束していく感じがして、聴き終わった後の余韻がたまりません。
特に前の曲「Your Mother Should Know」の軽やかでリズミカルなムードから、この「Because」の神秘的な雰囲気に切り替わる瞬間が絶妙です。その対比が効いていて、まるで映画のクライマックスからエンドクレジットに移行するような感覚。アルバム全体が一つのストーリーのように感じられませんか。
この曲の一番の聴きどころは、ジョン、ポール、ジョージの三人が織りなす奇跡のハーモニー。なんと言ってもその一体感がすごい。まるで声だけで楽器のような奥行きを作り出しているんです。そして歌詞もとても抽象的で、シンプルだけど深い。ちょっと哲学的な響きもあり、何度も繰り返し聴きたくなります。静かに進むピアノのアルペジオに重なるハーモニーの神秘的な響き…。ウィスキーが合いそうです。
この「Because」をアルバムのラストに配置することで、物語の最終章が静かに幕を閉じたような、満足感と充足感を味わうことができるんじゃないでしょうか。同時に、その神秘的で夢幻的な余韻が、アルバム全体を深く心に刻み込みます。このアルバムは単なる曲の寄せ集めじゃないぞ!という感じがしませんか(勝手に私が寄せ集めたアルバムですが)。余韻に浸ることで、これぞ「ビートルズマジック」と思っていただきたい!
「赤盤」「青盤」「1」に入っていないビートルズのベスト盤
ビートルズの音楽は、いろいろな形でまとめられてきましたが、今回は「赤盤」「青盤」「1」に収録されていない曲でベスト盤を作ってみました。いわゆる「ビートルズの隠れた名曲」を集めたわけです。選んだ16曲には、それぞれの曲が持っている特別な魅力があり、まさに「これを外すなんて考えられない!」と思わせてくれる楽曲ばかりです。
曲順については、ただ単に好きな曲を並べただけではなく、アルバム全体の流れを意識しました。例えば、オープニングの「It Won’t Be Long」から徐々にテンションを上げつつ、後半に向けて聴き手が思わず引き込まれるような、変化に富んだ展開を意識しています。アルバムの締めくくりには、何度も聴きたくなるような曲を配置しました。
この16曲の中には、ジョン、ポール、ジョージそれぞれの作曲がしっかりと反映されています。ジョンが作った曲は圧倒的に多いですが、ポールとジョージの名曲もたくさん。ジョンは9曲、ポールは5曲、ジョンとポールの共作が1曲、ジョージは1曲を担当しています。それぞれの個性が光る楽曲が並んでいますが、どれもビートルズらしいサウンドを持ち、時代を超えて愛される魅力が詰まっています。
これまでのベストアルバムに収録されていない曲を集めたことで、また新たに発見があるかもしれません。ビートルズの音楽はまだまだ掘り下げる余地がある、そんなことを改めて感じさせてくれるベスト盤ができたと思っています。
以上「ビートルズ ベスト盤に収録されていない曲でベスト盤を作った!」でした。おしまい。
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もう少しビートルズを詳しく知りたい方は、歴史を押さえておきましょう。10分で分かるバージョンを用意しております。そして、忘れちゃいけない名曲ぞろいのシングルの歴史もあります。
手っ取り早くビートルズの最高傑作を知りたい方は、ロックの専門誌「ローリングストーン」誌が選出したオールタイムベストアルバムの記事を読んでください。ロックを含むポピュラー音楽史の中で評価の高いアルバムをランキング形式で紹介しています。
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