「明るく楽しいビートルズ!」のイメージとはうらはらに、けっこう放送禁止楽曲を作っているビートルズ。今やレジェンドに君臨している彼らですが、現役時代はかなり攻めた立ち振る舞いをし、良識ある大人が眉をひそめる楽曲を作っています。なにしろあのキリスト教に喧嘩を売ったビートルズです。ある意味、いちばん危険な奴らなのです。
そんな放送禁止楽曲を過去の記事で5曲紹介しましたが(詳しくはこちら)、今回はさらに5曲ほど紹介いたします。ちょっと水増し感ありますが、大目に見てください。それではさっそく!
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絶対にわざとやってる! Lucy In The Sky With Diamonds
まずは放送禁止楽曲がたくさん収録されている『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』からLucy In The Sky With Diamonds です。作者はジョンレノン。ビートルズのサイケデリック楽曲の代表的な一曲で、一時的にBBCから放送禁止の措置を取られています。
サイケデリック・ミュージックとは、ひらたく言うと、幻想的な感じのする曲のこと。1960年代半ばドラッグカルチャーがもてはやされた時代に花を咲かせた音楽のことで、ここではドラッグを連想させる曲のことをだと思ってください。
Lucy In The Sky With Diamonds はもう聞けばいっぱつで幻覚的です。サウンドはとろけるように幻想的で、歌詞もカラフルで摩訶不思議。映像も素晴らしく陶酔的です。だれが聞いても「これは、いけないお薬の歌」だと分かります。
加えて、曲の頭文字を繋ぎ合わせると、Lucy In The Sky With Diamonds 、LSD、幻覚剤の名前になります。これが決め手となりこの曲は、一時的に放送禁止!となっています。
この曲名の問題について、ビートルズ側は否定しています。作者のジョン曰く、保育園に通う息子のが書いた「友人のルーシーがダイヤモンドをもって空を飛んでいる絵」からアイデアを得たと言っています。これ、どうなんでしょう?怪しいくないですか。
Lucy In The Sky With Diamonds の LSD 問題。私はわざとだと思っています。ビートルズならこのくらいのことを平気でやりそうです。ということで、Lucy In The Sky With Diamonds でした。
歌詞が完全にアウトだった Fixing a Hole
2曲目も『サージェントペッパーズ』からです。今度はポールマッカートニーの作品、Fixing a Hole です。曲調としては、ほんわかとしている曲なのですが、歌詞がドラッグを連想させるとして放送禁止となっているようです。
問題の歌詞は(というか曲のタイトルなのですが)、Fixing a Hole の部分です。直訳すると「穴を埋める」ですが、スラングだと「良くない液体を注射した跡」となるようです。これにて判定はアウト。放送禁止となっています。
この曲、摩訶不思議で意味深そうな感じの歌詞なのですが、まさかそんなスラング含まれているなんて、驚きですね。普通に字面だけ読むと「処方されない薬」なんて感じないのですが、1960年代という時代や『サージェントペッパーズ』の持つ雰囲気が、薬物を連想させたのかもしれませんね。
ビートルズ側の意図ははっきりわからないのですが、ほんの少し意図的な感じも受けます。あのガンガンにエコーを聞かせたポールの歌声はちょっと幻想的な感じをうけませんか。それにジョンがこの曲の歌詞を「ポールもやればできる」と、ほめているのも怪しい感じがします。さて、どっちなんでしょうか。意図したものでしょうか。ということで Fixing a Hole でした。
意図的?それとも偶然? Being For The Benefit Of Mr. Kite!
3曲目も『サージェントペッパーズ』からです。以前に紹介したA Day In The Life も含めると収録曲のかなりの曲が放送禁止措置になっていますね。放送禁止楽曲も含めながら、ロックの最高傑作に君臨しているんだから、あらためてすごい作品だと思います。
さて、ミスター・カイトです。この曲はジョンレノン作の楽曲で、サーカス感あふれる楽しい感じの曲ですが、残念ながら放送禁止になっています。どこが問題だったのでしょうか。この曲、ミスター・カイトは『サージェントペッパーズ』を象徴する楽曲で、確かにサウンドはサイケデリック・ミュージックそのものです。ただ、ひっかかったのはここではありませんでした。NG判定がだされたのは、やはり歌詞。Fixing a Hole 同様、歌詞でした。具体的には、馬の名前に問題があったようです。
ジョンはこの曲の歌詞を、骨董屋で買ったサーカス団のポスターの宣伝文句をヒントに書き上げています。意外というかなんというか、けっこうポスターに忠実で、歌詞に登場するミスター・カイトやヘンダーソンといった名前はポスターにも登場します。不思議なのは馬の名前です。
ポスターにあった馬の名前はザンサルス(Zanthus)。でも、歌詞に登場する馬の名前はヘンリーです。歌詞にする際にジョンが変更したのだと思います。そして、なんとも残念なことにこのヘンリーがヘロ●ンを連想させるという理由でBBCから放送禁止とされてしまっています。
これはどう解釈すればいいのでしょうか。名前の変更の理由は薬物を意図的に示唆するため?なのでしょうか。これ、もし意図的じゃなかったら、かなり目を付けられていますね、ビートルズ。ということで、Being For The Benefit Of Mr. Kite! でした。
放送禁止の理由がよくわからない Mother
4曲目は、ジョンレノンのソロ作品 Mother です。ビートルズ作品じゃないのですが、おおめに見てください。この曲は、ビートルズ解散後のジョンの初のシングル作品です。この曲もまた、アメリカで放送禁止の憂き目にあっています。その理由が、ちょっと驚きです。
理由は、狂気を感じるから。
なんともまあ、という感じです。確かにイントロの鐘の音は不気味ですし、アウトロのシャウトはかなり刺激的です。クレイジーな感じであると言えばそうなんですが、音楽的な表現の範囲ではないかと思うのです。
ビートルズは薬物関連で多くの曲が放送禁止をくらっていますが、さすがにサウンドが決定的な理由でNGになっている曲はないように思います。不気味な曲No.1の A Day In The Life だって歌詞が問題となって放送禁止です。
でも、この曲 Mother は、歌詞を含め全体的に「狂気じみている」との理由だそうです。特別、薬物を連想させるわけでもなく、いやらしい感じがするわけでもないこの曲が、放送禁止というのは、よくわかりませんね。聞く人にとって何か有害なのでしょうか。実に不思議です。
もっとよくわからない Imagine
最後に紹介するのもジョンのソロ作品です。ジョンレノン作の超有名作品ですね。近年のオリンピックで頻繁に演奏される人類規模のイベントには欠かせないこの一曲。今や平和の象徴といってもいいくらいの曲です。信じられないことにこの曲も放送禁止になっているんです。
リリース当時は、左翼傾倒と言われたみたいですが、時を経て、そうした思想がそぎ落とされて普通に人々の心に響く曲になっています。改めて聞いてみると、平和を訴えている実にいい曲じゃないですか。それがどうして放送禁止に?理由はいろいろあるようですが、1991年の湾岸戦争時には、
歌詞が反戦的。
という理由でBBCが放送禁止にしたらしいです。「反戦的で、どこが悪いの?」と思いますが、当時はそうだったらしいです。まったくけしからんことです。
また、アメリカで起こった9.11の同時多発テロの時も、「Imagine there’s no Heaven」という歌詞が理由で放送自粛リストに入っています。影響力が大きすぎる歌だけに、放送する側もあれこれと考えてしまうのかもしれません。
そうした放送禁止措置がある一方で、戦争や紛争、悲しい出来事があるたびにこの曲は、いろんなところから流れてきます。それこそ放送禁止措置なんて関係なくです。それは、ある意味で、まだ世界は平和じゃないってことかもしれませんね。ということで Imagine でした。
放送禁止は影響力が大きい証拠
ビートルズとジョンレノンの放送禁止楽曲を紹介してきました。どれもこれも良い曲ですね。放送禁止の理由はさまざまですが、けっこう強引な感じで禁止になっている曲もあるようですね。
ここで紹介したBeing For The Benefit Of Mr. Kite! の馬の名前なんて、こじつけにもほどがあると思うのですが、いかがでしょうか。ヘンリーが薬物を連想させるとか言い出したらきりがないようなきがします。
それから Imagine です。「反戦的」が理由で放送禁止というのは真実なのでしょうか。もしそうなら、The world is so wrong(世界は間違っている)だと思います。
以上、実は放送禁止指定されていたビートルズの5曲(いい曲なのにもったいないパート2)でした。おしまい。
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