ビートルズ第二のドラマー、ポールマッカートニーのドラムが聞ける楽曲 5選

ビートルズについて

ビートルズのドラマーといえば、なんと言っても、リンゴスターです。「リンゴはドラムが下手なんじゃないか」などと言われたこともありましたが、それはもう昔のこと。今では、リンゴのドラムは唯一無二のサウンドだと、評価されています。リンゴスターはビートルズの偉大なドラマーなわけです。

当然のことですが、ビートルズの楽曲のドラムの「ほとんど」がリンゴによるもの。そうです。「ほとんど」なので「すべて」じゃないんです。つまり、他に誰がドラムを叩いた人物がいるわけです。

ポールマッカートニーです。

天才ポールマッカートニーは、リンゴとはまた一味違ったアプローチでドラムを演奏しています。ということで、今回は、ポールマッカートニーがドラムを叩いているビートルズの5曲を紹介します。

ポールのドラミングの魅力だけでなく、あわよくば、なぜ叩くことになったのか?といおう背景を交えてお話しできればと思います。それではさっそく、この曲から。

Back in the U.S.S.R. (from『The Beatles』)

通称『ホワイトアルバム』(1968年)に収録された「Back in the U.S.S.R.」は、チャックベリーの「Back In The U.S.A.」とビーチボーイズの「California Girls」をパロディにした、陽気でアップテンポなロックンロールナンバーです。

力強いリズムとシンプルなコード進行、そしてポールのパワフルなボーカルが特徴的ですね。歌詞は、ソビエト連邦に帰国する喜びとその体験をユーモラスに歌っています。また、一部には、ソビエトの厳格な社会体制と対比して、自由な西側の生活を暗示する皮肉も含まれていると、解釈されることもあるようです。

確かに、冷戦ど真ん中のこの時代に、この歌詞を聞かされるとソビエト社会に対する一種の揶揄と解釈してしまうのも無理ないかなー、なんて思います。冷戦下の社会状況を背景に、自由や解放といった普遍的なテーマも扱っている楽曲なのだと思います。

さて、ポールがドラムを叩いた理由です。

この曲では、リンゴが一時的にバンドを離れていたため、ポールがドラムを担当しています。リンゴの一時離脱の理由は、「リンゴの演奏のミスをポールが訂正して実演した」や「演奏のミスをポールが揶揄した」、「演奏のミスをポールが指摘した」などと言われていますが、要するにポールとリンゴの仲違いだったようです。それでリンゴの代わりにポールがドラムを担当することになりました。

ちなみにリンゴのこの一次脱退は他のメンバーを動揺させます。ジョンレノンは、リンゴに元気付ける電報を送り、ポールはリンゴのドラムを褒め称えたとのこと。2週間後にリンゴは復帰するのですが、そのときジョージハリスンはスタジオを花で飾って迎えたそうです。やはり愛されているリンゴスターです。

そんなこんなでポールがドラムを叩いたこの楽曲。実際のところ、ポールのドラミングは非常に正確で力強く、曲全体にエネルギーを与えています。特にイントロのドラムロールは、曲の印象を決定づける重要な役割を果たしていると思います。ビーチボーイズ風のコーラスとポールのドラミングが一体となって、曲に独特のグルーヴ感を生み出しています。

The Ballad of John and Yoko

1969年にシングルとしてリリースされた「The Ballad of John and Yoko」は、ビートルズの楽曲でありながらも、ジョンの個人的なことを歌うという非常に珍しい作品です。歌詞には、オノヨーコとの結婚、「平和のベッド・イン」、メディアからの批判、そして社会的・政治的なテーマが織り込まれています。

音楽的には、軽快なテンポとストレートなメロディーが特徴。ジョンの力強いボーカルが、歌詞をダイレクトに伝え、ポールのベースラインは楽曲に躍動感を与えています。加えて、ポールによるドラムプレイも簡潔ながらエネルギッシュで、楽曲全体を引き締める役割を果たしています。個人的面白いと思うのは、ポールのあのハーモニーです。なんと名前を付けていいのやら、絶妙なハーモニーだと思いませんか?

とにもかくにも、この「The Ballad of John and Yoko」は、ビートルズ楽曲の中でも特異な存在です。レコーディングはジョンとポールの二人のみでされており、そこも珍しい。ジョンとポールだけでレコーディングが決行されたのは、ジョージもリンゴもスケジュールが合わなかったためだそうです。ジョンはボーカルとギター、一部パーカッションを担当、それ以外の楽器はポールが演奏しています。もちろん、ドラムもです。これがこの曲でポールがドラムを叩いた理由なわけです。

ビートルズ内の関係がギクシャクする中、フロントマンの二人が協力して曲を作っているのは、ファンとしてはなんとも嬉しい!ちなみに、ジョージとリンゴもレコーディングに参加できなかったことは、さほど気にしていない様子です。ジョージなんかは、「タイトルが、ジョンとジョージとヨーコのバラード」だったら参加したかも…と、なぞの発言をしています。

そんなこの曲のポールのドラミングについて。シンプルながらも的確なドラミングで、楽曲にリズムの安定感を与えています。ポールのこの演奏が、ジョンの歌声とギターを引き立てていると思いませんか。特に、中盤のブリッジ部分でのドラムのリズムが印象的です。リンゴからの評価も良好。「上出来だ」とのコメントもあります。

Dear Prudence(from『The Beatles』)

「Back in the U.S.S.R.」と同じく『ホワイトアルバム』に収録された「Dear Prudence」はです。この曲はジョンが作詞作曲を手掛けた、瞑想的で美しい楽曲です。それもそのはず、この曲はインドのリシケシュでの瞑想修行中に書かれました。歌詞は、同じ瞑想セッションに参加していたミア・ファローの妹、プルーデンス・ファローに向けたもの。瞑想に没頭しすぎて周囲とほとんど交流を持たなかった彼女を心配したジョンが、外の世界に目を向けてほしいという思いを込めています。静かな優しさと親しみを感じさせるメロディーが特徴で、聴く者の心を穏やかにする楽曲です。

そんな優しい瞑想的なこの楽曲もポールがドラムを叩いています。理由は、「Back in the U.S.S.R.」と同じです。リンゴのドラムにポールが注文をつけ、それが引き金となってリンゴが一時的に脱退していたためです。

ポールのドラミングは、この曲の穏やかで瞑想的な雰囲気を巧みに支えています。シンプルながらも楽曲全体のグルーヴ感を生み出し、その安定感は楽曲の土台として重要な役割を果たしています。特に、クライマックスでの力強いドラミングは、ジョンのボーカルとギターソロを際立たせていますね。残念ながら、この曲のポールのドラムに対して、リンゴがどういう評価をしているのかは、わかりません。ただ、ファンである私からすると、リンゴとはまた違った味わいがあって素晴らしい!と思います。

Mother Nature's Son(from『The Beatles』)

通称『ホワイトアルバム』(1968年)に収録された「Mother Nature's Son」は、ポールが作詞・作曲を手がけた、自然をテーマにした美しいアコースティックナンバーです。シンプルなギターアレンジと、ポールの優しいボーカルが印象的な一曲ですね。この曲は、インド滞在中にインスピレーションを得た作品のひとつで、自然の美しさと心の静けさを歌っています。

歌詞には「母なる自然の息吹を感じながら、自分自身を見つめ直す」といったテーマが込められており、聴く者に穏やかで安らかな気持ちを与えてくれます。曲全体が持つ温かさや親密さは、ポールならではの感性が光る部分だと思います。

さて、この曲はポールがほぼ単独で録音を行ったことで知られています。ギターやボーカルだけでなく、ドラムやパーカッションもポールが演奏しています。なので、リンゴはドラムを叩いていないんです。なぜリンゴがドラムを叩かなかったのか?

それは、調べたんですが、よくわかりませんでした。1968年8月にレコーディングされていますが、リンゴが一時離脱していた時期とは被っていないようです。他に理由があるとすればなんなんでしょうか?これは想像ですが、ポールが「自分のイメージを忠実に反映させたい」という思いが理由なのかもしれません。「Blackbird」と同様にデモに忠実に作られているので、その可能性は高いかと思います。

そんな「Mother Nature's Son」のポールのドラムは、曲の穏やかなテンポを支えるシンプルなスタイルで、全体の雰囲気を壊さず、むしろ繊細さを引き立てています。リンゴのドラミングとは異なりますが、ポールらしい慎重で丁寧な演奏が印象的です。

「Mother Nature's Son」は、インド滞在の影響を強く受けた楽曲のひとつであり、ポールの自然に対する愛情と芸術的な感性が見事に融合した作品です。この曲を聴くと、都会の喧騒を離れて自然の中に身を置きたくなるような気持ちになりますね。ポールの才能が存分に発揮されたこの一曲、ぜひじっくりと味わってみてください!

Wild Honey Pie(from『The Beatles』)

こちらも同じく『ホワイトアルバム』に収録された「Wild Honey Pie」は、わずか1分弱という短さながら、奇抜で印象的な楽曲です。ポールが作曲したこの作品は、アコースティックギターの荒々しいサウンドと独特なボーカルスタイルが特徴的。タイトルに「Honey Pie」とあるため、どこか甘いムードを想像させますが、実際のところはかなり実験的でワイルドな仕上がりです。

面白いのは、この曲が後に同じアルバムで登場する「Honey Pie」のパロディソングとも言える位置づけでありながら、「Honey Pie」よりも先に制作されている点です。曲順もこの曲の方が先にでてきます。通常、パロディは元となる曲があって初めて成立しますが、時間軸が逆転しているのは非常にユニークですよね。

この曲のドラムもポールが担当しています。なぜなのでしょうか?

「Mother Nature's Son」のレコーディングに続けて、レコーディングされたからのようです。「Wild Honey Pie」は、1968年8月20日にアビーロード・スタジオで録音されました。このセッションには他のメンバーは参加しておらず、ポールが全ての楽器とボーカルを担当しています。ちなみに、同じ日に制作が試みられたのが、「Etcetera」という未発表曲です。

「Wild Honey Pie」は、意味を追求するタイプの楽曲ではなく、ただ楽しむことが目的と言える作品です。短い時間の中に詰め込まれたエネルギーと遊び心は、ポールの自由な創作精神を感じさせます。荒々しくワイルドで、まだ制作途中のような曲ですが、アルバムにスパイスを効かせていると思いませんか?奇抜でユニークな「Wild Honey Pie」、ぜひアルバムの中で改めて聴いてみてください。この短い一曲が持つ不思議な魅力に、きっと笑顔になれるはずです!

隠れたドラマー、ポールマッカートニー

ビートルズの楽曲におけるドラムといえばリンゴ・スターがその象徴ですが、一部の楽曲ではポール・マッカートニーがその役割を担う場面もありました。リンゴの一時的な脱退や、ポール自身が楽曲のイメージを忠実に再現しようとした結果として、ポールのドラミングが取り入れられたのです。その演奏スタイルは、リンゴとは異なるアプローチで楽曲に新たな彩りを加えています。

ポールがドラムを担当した楽曲には、「Back in the U.S.S.R.」や「The Ballad of John and Yoko」、「Dear Prudence」などがあり、それぞれで彼の正確で力強いリズム感が発揮されています。特に、ポールのドラミングは楽曲全体を引き締める役割を果たし、独自のグルーヴを生み出しています。また、「Mother Nature's Son」や「Wild Honey Pie」では、楽曲全体を一人で仕上げる中で、ポールならではの繊細で緻密なドラムプレイが聴かれます。

これらの楽曲は、ビートルズ内の創作過程やメンバー間の関係性を垣間見ることができる貴重な例でもあります。リンゴの一時脱退をきっかけに他のメンバーが彼を気遣うエピソードや、ポールの多才さが楽曲制作にどれほど影響を与えたかが明らかです。ポールのドラミングは、バンドの音楽的多様性を象徴する重要な要素の一つであり、彼が担った役割の幅広さを物語っています。

以上、「ビートルズ第二のドラマー、ポールマッカートニーのドラムが聞ける楽曲 5選」でした。おしまい!

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