2020年代に入ってもビートルズの話題は途切れません。2017年にリリースされた『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』を皮切りに名作アルバムのデラックス・エディションがどんどんリリースされています。2022年には『Revolver』のデラックス版がリリースされ話題を呼びました。嬉しい限りでございます。
何が嬉しいかというと、今まで聞けなかったアウトテイク音源が聞けること。過去、アンソロジー・シリーズのリリースで一部のアウトテイク音源が聞けるようになりましたが、一連のデラックス版はより深いアウトテイクを聞くことができます。
今回は、そのアウトテイク楽曲の中から、個人的に聞いて驚いた作品を厳選して5曲紹介します。どれもこれも、本当にアウトテイクなの?と言うくらいのクオリティの作品ばかりです。それではさっそく!
YouTubeもやっています。ぜひ、見てください!
天才集団ビートルズ! Got To Get You Into My Life
1曲目は奇跡のアルバム『Revolver』のスペシャルエディションから。Got To Get You Into My Life のセカンドバージョン、アンナンバードミックスです。2022年10月のリリースに先立ってYouTubeで公開されたときからもうすでに、私は心を奪われていました。名曲です。
『Revolver』のスペシャルエディションには他にも魅力的なアウトテイクがたくさんですねー。Tomorrow Never Knowsもそうですし、And Your Bird Can Sing も魅力的です。RainのTake5なんて興味をそそりまくりじゃないですか!あんなスピードで演奏されていたなんて…。ビートルズを深ーくしるには、まさにうってつけの作品ですね。
その中でもとりわけ驚いたのが Yellow Submarine と Got To Get You Into My Life です。 Yellow Submarine についてはこちらをご覧ください(「新発見!?ビートルズの名曲 イエローサブマリンはジョンレノンの曲なの?」)。
さて、Got To Get You Into My Lifeです。『The Beatles Anthology2』にもアウトテイクは入っていましたが、スペシャルエディションのセカンドバージョン、アンナンバードミックスはすごかった!どこがスゴイって…、
むちゃくちゃカッコイイところです。
リリース版のブラスセクションの部分がギターになっておりワイルド。ポールマッカートニーのボーカルも激しい感じです。ここまででも感動的なのに、ジョンレノン&ジョージハリスンによるコーラスも楽しめる仕様になっています。驚かない人はいませんね。
リリース版もカッコイイですが、スペシャルエディションのバージョンもかなりカッコイイ!この曲を聞いたら誰しもが思うことでしょう。
ビートルズって天才!
ということで、Got To Get You Into My Life でした。
原曲もやっぱりカッコよかった! Gimme Some Truth
『Let It Be』のスペシャルエディションからは Gimme Some Truth です。この曲はジョンのアルバム『Imagine』に収録されているソロ作品です。それが、なんと『Let It Be』のスペシャル盤に収録されているではありませんか!
『Let It Be』の制作過程で行われたセッションでは、メンバーのソロとしてリリースされている作品がレコーディングされていたとは聞いていましたが、本当に聞くことができるなんて、良い時代になったものです。やはりゲットバックセッションは奥が深い。
それにしても、Gimme Some Truth の原曲が聞けるのは嬉しい&驚きす。曲調は『Imagine』時代のジョンにしては珍しくロックです。歌詞は非常に重い感じ。次作の『Sometime in New York City』を予感させる政治的なものになっています。
Imagine もそうですが、この曲をビートルズ時代に完成させてリリースしていたら、どうなっていたでしょうね。さらに代表曲が増えるということだけでなく、社会的な影響もすごかったんじゃないかと思います。
ジョンのこの名曲に加え、ジョージの All Things Must Pass のような楽曲が既にあったのなら、やっぱり『Abbey Road』の次の作品は作っていてほしかった。ということで、Gimme Some Truth でした。
メドレーの曲順って違ったんだね The Long One
続いては名作『Abbey Road』の50周年盤に収録されている楽曲たちです。どれか特定の曲というわけではないのですが、驚いたという意味で通称 The Long One と呼ばれていたアビーロードメドレーを取り上げたいと思います。問題の箇所はどこかというと…、
Her Majesty の位置です。
正式リリース版では、アルバムの最後の最後、隠しトラック的に使われていた曲ですが、当初の予定だと Mean Mr. Mustardと Polythene Pam の間に堂々と位置しているではありませんか!メドレーを聞きこみすぎて、曲順が体にしみこんでしまっている私にとって、このHer Majesty、改めて聞くと結構な違和感を感じます。
決して嫌いな曲ではないのですが、なんか違いますね。やっぱりHer Majesty は隠しトラックでないといけない気がします。メドレーから外されているのは、ビートルズのメンバーも違和感をかんじたからでしょうか。
ちなみに、メドレーから外されることが決定したとき、この録音は破棄するようにエンジニアに伝えられていたそうですが、「ビートルズのものは何でも残せ」というレコード会社のEMIの方針により、破棄されなかったそうです。
いいですねー、この方針。
これが Her Majesty の隠しトラック化につながり、後のアンソロジーシリーズや昨今のスペシャルエディションに繋がっているんですから、すごいですよね。ナイスEMIです。
インストもやっぱり素晴らしい! Penney Lane
4曲目は『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の50周年記念盤からPenney Lane(Take 6 - inst)です。ディスク2に収録されているので、ぜひ聞いてみてください。大ボリュームの作品なので、他にもいろいろあるだろ!という気もしますが、一番驚いたんだからしかたありません。どこに驚いたのかというと…。
何の曲だか分からなかったんですね。
ビートルズを聞きこんでずいぶんと長い年月が経過しており、全曲把握しているのは当たり前。たとえ、インストであっても聞けばすぐにわかるさ!との慢心があったのかもしれません。Penney Lane(Take 6 - inst)が流れてきたとき、あれ?何の曲?となったわけです。曲名を見た時、無知を恥じじました。まったくもって修行が足りていませんでした。
そんなこんなで Penney Lane(Take 6 - inst)です。ジョンレノン作のStrawberry Fields Forever と両A面でリリースされたこの楽曲はポールマッカートニーの作品。膨大な時間をかけて作られた Strawberry Fields Forever 以上にレコーディングに時間をかけたという作品です。
改めて聞いてみると、インストだけでもウキウキしますね。随所にポールのこだわりが感じられてとても面白い作品です。アウトテイクといえば Strawberry Fields Forever に目が行きがちなのですが、Penney Lane も十分にオモシロイ!さすがビートルズです。ということで、Penney Lane(Take 6 - inst)でした。
ジョージの能力に驚きを隠せない! While My Guitar Gently Weeps
最後に紹介するのは『The Beatles』の50周年記念盤に収録されているジョージハリスンの傑作 While My Guitar Gently Weeps[Esher Demo] です。当時、ジョージの家があったEsherで録音されたデモ作品なので、Esher Demoと呼ばれています。
このデモが録音されたのは1968年の5月のこと。ビートルズがインドから帰国してほやほやの時です。インドで書き溜めた曲を一気にデモ版にしたためています。ホワイトアルバムの原型がここにあり、数々の名曲がデモ録音されているのですが、この While My Guitar Gently Weeps は最高です。
当然ですが、まだエリック・クラプトンのギターも入っていないアコギ一本のラフな演奏ですが、これがもうしびれるんです。曲の持つ美しさが隠し切れないほどにあふれ出ています。テンポがリリース版よりもはるかに速いのが特徴。試行錯誤を重ねるうちにテンポが遅くなっていったんだと思いますが、私はこのテンポの While My Guitar Gently Weeps が好きです。
『Beatles Anthology 3』でもこの曲のアコースティックなアウトテイクは聞けるのですが、断然Esher Demoのほうがおすすめです。
大きなお世話かもしれませんが、Esherデモを制作している時点では、まだビートルズのメンバーの関係は良好だったのだと思います。この後、本格的にホワイトアルバムの制作にかかると関係は悪化していくのですが、そう考えるとこのEsherデモは非常に貴重ですね。
ビートルズにはまだまだお宝アウトテイクがある!?
今回、一連のデラックス・エディションを聞いて驚いた楽曲を厳選して5曲紹介してきました。ここで紹介した楽曲がこちら。
- Got To Get You Into My Life
- Gimme Some Truth
- The Long One
- Penney Lane
- While My Guitar Gently Weeps
どの曲も最高峰の楽曲ばかりですね。正式リリース版にはない良さがあります。アウトテイク、残ってよかったー。これはもう人類の宝です。ナイスEMIです。
そうなってくると期待してしまうのが、アルバム『Rubber Soul』のデラックス・エディションです。あるのでしょうか、ないのでしょうか。あってくれ!と祈ることにしましょう。以上、「聞いて驚いた!ビートルズのアウトテイク作品5選(デラックスエディション収録作品)」でした。おしまい。
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もう少しビートルズを詳しく知りたい方は、歴史を押さえておきましょう。10分で分かるバージョンを用意しております。そして、忘れちゃいけない名曲ぞろいのシングルの歴史もあります。
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