【Abbey RoadとLet It Be】ビートルズのラストアルバムはどっち?

1968年-1970年(後期)

活動期間約8年の間に名作を大量に残してきたビートルズ(The Beatles)。オリジナルアルバムを12枚、『Magical Mystery Tour』を数に加えるとわずかな活動期間内に13枚ものアルバム(人類の宝)を残してくれています。

ビートルズをこれから聞くぜ!という人には、ぜひ1枚目の『Please Please Me(プリーズプリーズミー)から初めて、最後のアルバムまで順に聞いてほしいところ。

そう、最後のアルバム…、

あれ?

『Abbey Road(アビーロード)』だっけ?『Let It Be(レットイットビー)』だっけ?

ビートルズに詳しい方はもうご存知でしょうが、この2枚のどっちをラストアルバムとするのかは、ちょいとややこしいのです。何がそうややこしくしているのでしょうか。今回、その点に焦点をあててみたいと思います。

制作日とリリース日が、ややこしや

『Abbey Road』は、実質的なラストアルバムとして、よく語られます。ビートルズのことをよく知らない人にとっては、実質的って何?という感じだと思います。

「実質的な」と形容が付いている時点で、ラストアルバムじゃないんだなと予想がつきますね。そうなんです。『Abbey Road』はビートルズが最後にリリースしたアルバムじゃないんです。最後にリリースしたアルバムは『Let It Be』なんです。

『Abbey Road』のリリースが1969年9月26日に対して、『Let It Be』は1970年5月8日のリリース。一目瞭然。『Let It Be』のほうが後にリリースされています。

じゃあ、『Abbey Road』の実質的って何?

ますます疑惑が深まりますね。ここでいう実質的ラストというのは、レコーディングをした日付を基準にしたものです。つまり『Let It Be』よりも『Abbey Road』のほうが日付としては後にレコーディングされたアルバムというわけです。

『Let It Be』のレコーディングはゲットバックという名のセッションで、1969年の1月ごろから開始。『Abbey Road』のレコーディングの時期は1969年7月から8月にかけてです。

なので、レコーディングは『Abbey Road』よりも先だけどリリースが後なのは『Let It Be』。最後にレコーディングされたけどリリースされたのは『Let It Be』よりも先なのが『Abbey Road』。実質的というのは、こういうわけです。

ただ、このレコーディングの時期については、実は『Let It Be』の一部の楽曲は、『Abbey Road』の録音よりも後に作られたものもあり、最近では実質的という表現にクエスチョンマークがついています。

全英で17週連続、全米では11週連続1位となるなど世界的な大ヒットを記録したモンスターアルバム。Disc 2とDisc 3にはポール・マッカートニーが他アーティストにプレゼントした「グッドバイ」「カム・アンド・ゲット・イット」を収録。他にも未発表曲が多数収録!!Her Majestyがメドレーに組み込まれている!?あの曲、メドレーの一部だったの!?気になりませんか?

伝説とファンの思惑が入り混じって さらにややこしや

『Let It Be』収録の楽曲に『Abbey Road』のレコーディングよりも後に制作された曲があると明らかになったのは、1990年代に入ってからのことです。それまでなぜ秘密にしていたんだという疑問は置いておいて、とにもかくにも『Abbey Road』後にもゲットバックセッションは続けられていたようです。

そうなってくるともう『Let It Be』が名実ともにラストアルバムなんじゃないかという気もしますが、単純にそうならないのがビートルズです。いやビートルズファンの心理です。

『Abbey Road』と『Let It Be』のアルバムとしての評価を比べた場合、一般的には『Abbey Road』に軍配があがります。『Let It Be』はビートルズ作品の中では、やや評価が低い傾向にあり、散漫、集中力に欠ける…、といった評価を受けています。

片や世紀の名作と称えられるアルバムで、片や集中力に欠ける評されるアルバムです。ファンとしてはなんとしても前者『Abbey Road』をラストアルバムにして、有終の美を飾ってほしいわけです。

そこで生み出された考え方が、「ビートルズがこれで最後と腹をくくって作ったアルバム」というもの。ビートルズが最後に本気だして作ったアルバムをもって、実質的ラストアルバムだ!としたわけです。かなり私の想像が入ってますが、そんな感じだと思います。

『Let It Be』は本気出してないアルバムなの?

そうなると問題になってくるのは、『Let It Be』は本気じゃないの?問題です。この点は、どうなんでしょうかね。ゲットバックセッションあたりのインタビューなんかを見る限りだと、失敗だったとか、うんざりだとか、あんまりポジティブなワードがでてこないのも事実です。

そして、ゲットバックセッション後、しばらくその音源を放置していたことも、本気じゃない感じが伝わってきます。そして決定的なのは、プロデューサーが違うことでしょうか。

『Let It Be』以外のビートルズのアルバムは一貫してジョージマーチンがプロデュースしています(She's Leaving Homeは例外)。ところがこの『Let It Be』に限っては、フィルスペクターがプロデュースしているのです。

失敗だった…との発言、音源放置、いつもと違うプロデューサーが編集してようやくリリース。これだけみると、やっぱり本気じゃない感じを受けます。

さらに『Let It Be』のリリースに合わせたかのようなポールマッカートニーによるソロ作品リリース(『McCartney』)もあって、より一層本気じゃない感が出ています。

実際のところはどうなんでしょう。

2020年、『Let It Be』リリース50周年に合わせたドキュメンタリー映画で、その点明らかになるかなと思っていたのですが、新型コロナの影響でまさかの公開延期。真相はまだわかりません。映画の公開を楽しみに待ちましょう。

メンバー仲が険悪な中で作られた作品で、まとまりのなさを感じるアルバムもあります。ファンはそこを歴史と捉えてこのアルバムを楽しみます。収録曲は名曲ぞろい。Let It Beはもちろん、Across the Universe、Get Backなどてんこ盛りです。まとまりのない中、こんな名曲が生まれるのですから、驚きですね。The Long And Winding Roadもありました!

結局、どっちがラストアルバムなんだい?

まあ、普通に考えると『Let It Be』かな…とは、思います。いくらレコーディングが『Abbey Road』より先だからといっても最後にリリースされた作品ですもん。これがビートルズじゃなくて他のミュージシャンだったら、最後にリリースされた作品がラスト作品なはずです。だって、レコーディングの時期なんてきにしませんから。

冷静に考えるとそうなりますね。ということで、ラストアルバムは『Let It Be』で…!と言いたいところですが、私はビートルズファンです。冷静に考えられるわけがありません。だから、なので、そういうこともあって、やっぱり『Abbey Road』をラストに位置付けたい。

『Abbey Road』収録の最後の曲がThe Endというのも『Abbey Road』のラスト推しに一役かってます(Her Majestyはおまけ)。伝説のバンド、ビートルズのラストアルバムの最後の曲がThe Endって美しいじゃないですか。

ということで、ビートルズのラストアルバムは『Abbey Road』に決まり!としたいと思います。

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