アルバム『ビートルズフォーセール』はビートルズの弱点なのか?

1962年-1965年(初期)

ビートルズがリリースしたアルバム13枚(『マジカルミステリーツアー』含む)を思い浮かべた時、ふと「どのアルバムが地味かな?」という疑問が頭をよぎることがありませんか。

  • Help!
  • Yellow Submarine
  • Let It Be

このあたりですかね?でも、タイトルがワールドクラスの曲なんですよね。地味だと言うには、少々無理があります。

アルバム『ビートルズフォーセール』はどうでしょう?

もしかしたらビートルズの唯一の弱点(?)である可能性があります。今回は、アルバム『ビートルズフォーセール』の特徴や聞きどころを紹介したうえで、弱点ではないということを示したいと思います。

ビートルズの人気が膨れ上がり、最も多忙な時期にリリースされた作品。他の作品に比べるとやや地味な感じがしますが、個人的にはターニングポイントとなった作品だと思っています。

 

『ビートルズフォーセール』はどんなアルバムなのか?

1964年12月にイギリスでリリースされたこの作品。超多忙な時期に制作されているためか、前作『A Hard Day's Night』ではなかったカバー曲も5曲収録されています。

 

【収録曲】
01.No Reply
02.I'm a Loser
03.Baby's in Black
04.Rock and Roll Music
05.I'll Follow the Sun
06.Mr.Moonlight
07.Kansas City/Hey,Hey,Hey,Hey
08.Eight Days a Week
09.Words of Love
10.Honey Don't
11.Every Little Thing
12.I Don't Want to Spoil the Party
13.What You're Doing
12.Everybody's Trying to Be My Baby

 

オリジナル曲に限定すると、有名曲はEight Days a Weekくらいでしょうか。確かに地味かもしれませんが、この曲だけで決断するのは早計です。もう少し他の曲を見ていく必要があります。

No Reply 歌詞が物語になっている初の作品

アルバム1曲目に収録されているNo Replyはジョンレノンの作品です。もともと他のミュージシャンに提供する予定だった曲らしいのですが、使われたなかったのでビートルズの作品になりました。ジョンのヴォーカルが冴えわたる劇的な曲です。

この曲の歌詞を聞いたディック・ジェイムスはジョンレノンに対して「大人になったね」みたいなことを言ったらしいです。ディック・ジェイムスというのは版権管理会社「ノーザン・ソングス」の設立を提案した人です。

このエピソードを初めて知ったときは「ディック・ジェイムスごときがナマイキな」と思いましたが、時を経てみると、なかなか鋭いなと思えてきました。

確かに物語になっている歌詞はこの曲が初めてかもしれない。

この曲から後のNorwegian Woodに繋がっていくことを考えると超重要曲ですね。

 

I'm a Loser ボブディランの影響が見える初めての曲

こちらもジョンレノンの作品です。この曲の特徴は内省的な歌詞です。

I'm a loserから歌詞を抜粋
I'm a loser
And I'm not what I appear to be
Although I laugh and I act like a clown
Beneath this mask I am wearing a frown
My tears are falling like rain from the sky
Is it for her or myself that I cry

一応、恋愛もののていをとっていますが、歌詞を見れば一目瞭然、ジョン自身の心の裡を歌っています。「ふざけたり笑ったりしている陽気なビートルズは本当の自分ではない。心の中では泣いているんだ。」と切に訴えています。これがあって次作の『Help!』につながるわけです。

ジョン自身も認めているように、当時親交のあったボブディランの影響を大きく受けています。ここから徐々にジョンの曲は惚れたはれたを卒業して内省的になっていきます。

この曲I'm a loserは、もしかすると、ディランの影響を受けた初めての曲かもしれません。

I Don't Want To Spoil The Party この曲もジョンの苦悩の歌?

こちらのジョンレノンの作品です。普通にいい歌です。が、歌詞の解釈によってはジョンレノンの苦悩が歌われているともとれる作品です。ジョンのことです。そうした仕掛けを施している可能性はあります。

I'm a Loserで「ビートルズを演じている自分は本当の自分ではない」と歌い、一方この曲I Don't Want To Spoil The Partyでは「パーティを台無しにしたくない」「落ち込んでるなんて思われたくない」と歌っています。

ビートルズを演じることへの違和感をもちながら、一方で期待に応えたい気持ちもある。

ジョンレノンの苦悩が見て取れます。この曲も次作の『Help!』への布石となっているようです。ビートルズ(特にジョン)が世界のアイドルであることに嫌気がさし始めたことがうかがえます。

『ビートルズフォーセール』は過渡期に必要なアルバムだった

『ビートルズフォーセール』は弱点なんかではないことが分かります。特に歌詞の面に注目すれば、このアルバムを制作していたころのビートルズが何を考え、どう思っていたのかが分かります。

コンサートに来ても音楽を聞かないファン、くだらない質問をするマスコミなどに嫌気がさしていたのだと思います。そのことが歌詞からよくわかります。

『ビートルズフォーセール』は、こうした主張がなされた初めてのビートルズのアルバムです。そう考えると、ビートルズ史においてこのアルバムもまた過渡期の重要作品のひとつです。

弱点だなんてとんでもないです。

ビートルズの人気が膨れ上がり、最も多忙な時期にリリースされた作品。他の作品に比べるとやや地味な感じがしますが、個人的にはターニングポイントとなった作品だと思っています。

 

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