ビートルズが我々に残してくれた楽曲は218曲あります。ここに各メンバーのソロ作品が加わると、なかなかの数になります。ビートルズの楽曲だけでも人生を賭して楽しめますが、ソロも守備範囲に含めると、これはもう、「一生ビートルズ宣言」ができそうです。
今回は、メンバーのソロ作品に焦点を当てます。解散直前のビートルズにはレコーディングは試みられたもののカタチにはならず、それぞれのソロに持ち越しみたいな楽曲がたくさんありそうです。ここでは厳選、3曲を紹介。まずはジョージハリスンからこの曲です。
不遇のジョージを象徴する All Things Must Pass
2021年に公開された映像作品の『Get Back』の中で、ジョージがジョンに「ソロを考えている」的な発言をするシーンがあります。ジョンは、さらりと受け流していますが、ジョージの中にはもやもやとしたものがあったのだと思います。
自分の作品が相手にされない…
ジョージがそんな不満をビートルズに抱いていたことは有名です。ジョンレノンとポールマッカートニーという二人の怪物は、ジョージをやや下に見ていた模様。そうなると優先順位も下がるわけです。All Things Must Pass がビートルズ時代に発表されなかったのも、そんなバンド内のパワーバランスが原因だった可能性はあると思います。この不満を一気に爆発させたのが、ジョージの会心の一撃『All Things Must Pass』だったんだと思います。
ビートルズでだめならソロでリリース!
ジョージは、積年の不満をアルバム『Let It Be』をプロデュースしたフィル・スペクターに相談。その縁あってか、ソロアルバム『All Things Must Pass』はスペクターのプロデュースでリリースとなり、全世界に好意的に受け入れられ、今では1970年代ロックの金字塔と評されているほどです。
ボリュームもまたスゴイ!Apple Jamを除いても18曲もあります。どれだけビートルズ時代にジョージが曲を書き溜めていたか、そしてビートルズ作品としてボツとされてきたかが分かりますね。まさに不遇のジョージ。ということで1曲目、All Things Must Pass でした。
ポールの名作 Teddy Boy
2曲目はポールマッカートニーの作品。ソロアルバム『McCartney』に収録されている Teddy Boy です。この曲もゲットバックセッションの時期に制作が試みられたものの、ビートルズ作品としてはボツになったものです。良い曲なのに、もったいないですね。
Teddy Boy 。タイトルだけを見ると、1950年代にイギリスで流行した荒くれた不良少年たちを連想してしまいますが、曲調は穏やか。ロックンロールを好むテディボーイズとの関連はなさそうです。テディと言う名前の少年のがテーマの曲です。
歌詞は謎めいており、ひらたくいうとテディのお母さんは「実は男性でした!」的なもの。「実は男性でした!」系の歌詞は、同じ時期のGet Back の歌詞にも見られます。ポールは何を意図していたんでしょうね。実に謎です。
まだまだ未公開の曲がある?ゲットバックセッション
謎が多いと言えば、ゲットバックセッションです。2021年に『Let It Be』のデラックス版がリリースされ、そこでこのセッションで演奏された曲は一部聞くことはできますが、まだまだ、我々が知らない曲がどっさりありそうです。
ジョージのAll Things Must PassといいポールのTeddy Boy といい、ソロになってリリースされている曲であれば問題ないのですが、演奏だけされてリリースされていない曲はもったいないですね。完成していないからといって、ゲットバックセッションの闇に葬られてしまうなんて、惜しいじゃないですか。
There You Are Eddie が聞きたい!
例えばこの曲 There You Are Eddie です。ゲットバックセッションで演奏されたポールの作品です。この曲もリリースされていません。YouTube に落っこちているのを聞くと、これがまた実にいい曲なんです。なぜ完成させなかったんだろう?なぜ、ソロで取り上げなかったんだろう?もやもやとした疑問が湧きあがります。
Eddie というのは、ポールが飼っていたヨークシャーテリアの名前。そうです。この曲が世に出ていれば、Martha My Dear に続く、犬ソングとなったはずです。ここにジョンのHey Bulldog を加えればビートルズ三大「犬」ソングになっていたのに…。闇が深いぜゲットバックセ・ッション!ということで、2曲目はTeddy Boy でした。
インド時代に書き溜めたジョンの名作 Jealous Guy
3曲目は、ジョンレノン、ソロのの名作 Jealous Guy です。ゲットバック・セッションの曲が続いたので、ここではアルバム『The Beatles(ホワイトアルバム)』のイーシャーデモからジョンレノンの曲 Child Of Nature です。この曲は、後にJealous Guy と名前を変え、アルバム『Imagine』に収録されます。イーシャーデモが録音された1968年には、歌詞は違えど、ほぼ完成していたんですねー。
インドで作られたこの曲は、やはりインドの影響をたっぷりと受けています。歌詞にも On the road to Rishikesh (リシュケシュへの道中)と、ヒンズー教の聖地 リシュケシュが登場します。なんとなくですが、同時期にポールがインドで作った Mother Nature’s Son にタイトルが似ていますね。インドはそれほど雄大だったんだと思います。
インドのリシュケシュからモロッコのマラケシュへ
さて、この曲 Child Of Nature です。謎なんです。イーシャーデモの時点でほぼ完成しているような気がします。なぜ、リリースしなかったのでしょうか。ホワイトアルバムに収録されていても不思議でないくらいに名曲です。ビートルズ側に何か意図があったのでしょうか。理由を探してみましたが、わかりませんでした。きっと、ジョンの気まぐれかな。出来上がりに納得ができなかったんでしょう。
その証拠に、ゲットバック・セッションでもこの曲は取り上げられています。ここでひとつオモシロいのは、曲名が On the road to Marrakesh となっているところ。行き先がヒンズー教の聖地ではなく、モロッコの街に変わっているんですね。インドに比べるとずいぶんと近くなっています。でも、モロッコに変えてみても、やっぱり完成しなかった模様。アルバム『Let It Be』にも収録されていません。
ジョンレノンとインドの関係
紆余曲折あったこの曲。タイトルもいろいろ変わった結果、最終的に Jealous Guy に落ち着き、ソロアルバム『Imagine』に収録され、陽の目をみることに。もうこの時点ではインド感はほとんどというかまったくなくなっています。でも、これはこれで良い曲ですよね。
思えば、ビートルズとインドは深ーい関係にあります。インドと言えばジョージハリスンのイメージがありますが、ジョンも十分に影響を受けて、その影響はソロになってもインドでスパイシーな曲があります。Jealous Guy もインド滞在の影響下の元に作られた Child Of Nature が下敷きになっている点で言えば、インドですね。他にソロワークスで思い当たるガラムマサラな曲と言えば…
India, India でしょうか。
完成させることなく、ジョンがこの世を去ってしまったので、デモ版でしか聞くことができないのですが、これまたかなりのインドな名曲です。1990年代のアンソロジープロジェクトで、ビートルズの新曲として取り上げてもよかったんじゃないかというほどの名曲です。
この India, India について作曲された時期などよくわからないのですが、おそらくジョンの晩年に作られた曲だと思います(ちがったらすみません)。インドに滞在した1968年。時を経て再びジョンがインドを取り上げた点に注目です。やはりジョンとインドは深ーい関係にあると言わざるをえませんね。少し話がそれましたが、3曲目、 Jealous Guy でした。
ビートルズ時代に作られたソロ作品はたくさんある!?
今回、ビートルズ時代に原型が作られていた曲を3曲紹介してきました。ここで紹介したのはこの3曲です。
- All Things Must Pass
- Teddy Boy
- Jealous Guy
どれもこれも良い曲ですね。探せば、まだまだざくざくとありそうです。特にゲットバック・セッションを深堀りすれば、たーんと出てきそうな感じです。ジョージの作品は言うまでもなく、ジョン作品にもポールの作品にもありそうです。
そういえば、『Let It Be』のデラックス・エディションに収録されていましたが、ジョンの Gimme Some Truth もこのセッションで原型が演奏されていましたし、Mind Games もだという説を聞いたことがあります。時間があったら、探してみようかな。
それにしてもIndia, India は良い曲ですね!以上、「ビートルズ時代にはすでに完成してた!?ジョン、ポール、ジョージのソロの名曲3選」でした。おしまい!
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