近代の音楽史に燦然と輝くビートルズ。活動期間は約8年と短いのですが、その間にビートルズの音楽はかなり大きな変化を遂げています。ここではそんなビートルズの音楽を変えるきっかけとなった楽曲を8曲ほど紹介していきます。それではさっそく!
YouTubeもやっています。よければぜひ見てください!
自作の楽曲にこだわったデビュー作 Love Me Do
まずはデビュー作のこの曲、Love Me Do です。1962年にリリースされ全英17位を記録しています。デビュー作としてはまずまずの記録でしょうか。後にビートルズ人気に火が付いた際に、全米1位を記録しているのですが、デビュー当初、イギリスではこの順位でした。
ブルージーで良い曲ですね。でも、なんとなく他のシングル作品に比べると、もうひとつキャッチーじゃないなー、なんて罰当たりにも思ってしまいます。それでもLove Me Do でデビューしたことが、ビートルズ史において非常に意味のあることだったんですね。
それは、ビートルズのメンバーが作曲した作品だからです。
1960年代当時、ポピュラー音楽業界は、「エライ作曲家が作った楽曲を歌手がありがたく歌わせてもらう。」これが業界の当たり前だったんですね。その当たり前にビートルズは従わなかった。彼らがデビュー作に選んだのは、他でもないビートルズのポールマッカートニーが作った曲でした。
プロデューサーはデビュー作として、作曲家が作った How Do You Do It? を用意していたらしいのですが、ビートルズ側は断固拒否。あくまで自作の曲にこだわったそうです。このこだわりが重要だったんです。
その理由は、曲を自分で作ることを当たり前にしたからです。
ビートルズ以降のバンドを見れば自作自演が当たり前になっていますね。なのでこのビートルズの自作へのこだわりが「音楽の歴史を変えた」と言っても過言ではないと思います。
世界がひっくり返るほどの衝撃 I Want To Hold Your Hand
2曲目は5作目のシングル、邦題でいうところの「抱きしめたい」です。ビートルズがアメリカを制覇するきっかけとなった曲であり、世界中にビートルズの存在を知らしめた伝説の1曲です。売れ行きも半端じゃなく、アメリカでは1時間で1万枚売れたそうです。
この曲がもたらした衝撃は、ものスゴイものでした。単に「爆売れしたレコードだねー」という認識だけでいるとビートルズを見誤ってしまいます。どんなところがすごかったの?
人々の考え方やスタイルを変えたところです。
やっぱりこれが「ビートルズの衝撃」の正体だと思います。権威的なもの含め、だれかれかまわず徹底的に茶化すビートルズのスタイルは、まさに新しく、そして自由な振る舞いとして人々の目に映りました。これがご機嫌なこの曲とともに世界に拡散されていったわけです。
1964年の2月9日。何の日かご存知でしょうか。
とっても重要な日。ビートルズが初めてアメリカのテレビ番組に出演した日付です。視聴率もミラクルながら、出演時間帯に若者の犯罪が発生しなかったという都市伝説もあるほど。この日をアメリカの文化の転換点と捉える人もいるほどです。
ということで、世界に衝撃をもらたした I Want To Hold Your Hand でした。この「ビートルズの衝撃」が、「今の時代」に今ひとつ伝わりにくいのは、その「衝撃」が今では当たり前になっているからだと思います。今の当たり前が、当たり前じゃなかった時代。ビートルズ後追い世代の私なんかが想像する以上に、当時は暗闇に包まれていたのかもしれませんね。
恋愛ものから自分自身の歌へ Help!
3曲目は1965年の作品、Help。ビートルズ10作目のシングルです。それまで基本的に恋愛をテーマにした曲が中心だったビートルズが、突然、心の叫びを曲にのせてきました。
作者のジョンレノン曰く「I knew I really was crying out for help. (自分が本当に助けを求めて叫んでいたことに気づいたんだ。)」とのこと。不思議なのは、世界を制したビートルズのリーダー、ジョンはなぜ助けを必要としたのかです。
当時のビートルズは人気絶頂。巨大化していく人気に押しつぶされ、自分自身を見失いつつあったとジョンは言います。ジョンはこの時期の自分を「 it was my fat Elvis period.(太ったエルビス時代)」と表現しています。
これはラスベガス時代の晩年のエルヴィスのことでしょうか。契約にしばられ身動きが取れなくなったエルヴィスと過熱する人気により自由を奪われた自分たちを重ねているのかもしれません。その心境が歌詞にあらわれたのだと思います。
ジョンの書く歌詞の変化は少し前の I'm a Loser にも見て取れます。 I'm a Loser とHelp!で自分自身を歌ったジョンは、その後にStrawberry Fields Forever を生み出し、それはやがてソロ作品の『ジョンの魂』の境地に達します。
聞く側の私たちとしても、このHelp!あたりからビートルズの曲がグッと深くなったという印象です。恋愛の歌ばかりじゃお腹いっぱいになりますからね。なのでHelp!はビートルズ史にあって重要な1曲だと思います。
ポピュラー音楽とクラッシックが融合 Yesterday
続いては、アルバム『Help!』収録の Yesterday です。作者はポールマッカートニー。この曲とジョンのHelp!が同じアルバムに収録されているんですから、ビートルズは無敵ですね。Yesterday については、今さら語ることがないほどに有名曲なのですが、ここにもビートルズ史にとって重要な出来事があります。
それは、弦楽四重奏を使ったビートルズ作品だということ。
ビートルズの音楽とクラッシックの融合した瞬間です。この曲をきっかけに、ビートルズのイメージが、それまでの若く荒々しいイメージから「あれ、センス良くね?」と変化していきます。
1960年代初期、まだロックと芸術を結び付けるには「違和感あり」の時代でしたが、この曲をきっかけにビートルズはアーティストの道を歩きはじめます。そしてその先にあったのがアルバム『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』だったのだと思います。なんだか壮大な感じになってきましたが、アーティストへの変貌の第一歩として Yesterday があるのは間違いないと思います。
音楽の幅をグッと広げたぜ! Yellow Submarine & Love You To
クラッシックとの融合が出てきましたので、次はサウンドエフェクトと東洋音楽です。まず、Yellow Submarine です。ある程度の長さを生きていればどこかで聞いたことがあるだろうこの楽曲では、当時としては画期的だったサウンドエフェクトがふんだんに使われています。
ここで使われたサウンドエフェクトはすべて実際の物を使って録音されたのだとか。例えば、間奏のブクブク音は、水の入ったコップにストローで息を吹くことで作られており、ざわーという音は水の入った容器の中で鎖をかき回して作ったりしています。
この曲以降、サウンドエフェクトはビートルズの得意技となり、いろんな曲できくことができます。A Day In The Life の目覚まし時計やバック・イン・ザ・U.S.S.R.の飛行機の音もそうですね。Yellow Submarine もまたビートルズのサウンドの幅をグッと広げた重要な1曲だと思います。
そしてLove You To です。聞けば間違いなくインドなこの楽曲。作者はジョージハリスンです。ジョージがインド音楽を始めたきっかけこそ、「ノルウェイの森」でのシタールの演奏でしたが、本格的にインドに取り組んだのはこの曲が初めてだそう。
ここから Meeting India となるわけですから、重要じゃないわけがないですね。それにしてもビートルズのアルバムから突然聞こえてくるインド。ラーガロックなんてなかった時代の出来事です。当時の人、驚いたでしょうねー。
そういえば、両曲ともにアルバム『Revolver』収録の作品です。この2曲を見ただけでも、いかにこのアルバムが革新的だったのかが分かりますね。ということでYellow Submarine と Love You To でした。
ビートルズ初の政治ソング Revolution
続いてはジョンレノン渾身の一作 Revolution です。曲のタイトルからしてバリバリの政治ソングですね。ソロになってからはバリバリと政治的発言をしてきたジョンレノンですが、ビートルズ時代にあってはこの曲で初めて政治的なメッセージを発信していますなんとも意外ですね。
また他のメンバーを含むビートルズとしても政治的な曲はあまりなく、ジョージが Taxman で「税金が高けぇぞ、バカヤロー」と言ってるだけです。発言を調べても、ジョンがインタビューで「俺たちの歌はすべて反戦歌だ」といっているだけです。
そんなビートルズが1968年に Revolution で政治ソングに殴り込みです。社会運動や学生運動が盛んだった当時、その光景を目の当たりにしたジョンは何かメッセージを発信しなければならないと考えたのだと思います。
何となくですが、ジョンが発信するのであれば、体制に異を唱えている運動家側の擁護にまわりそうなイメージがありませんか?でも、このRevolution、歌詞を見てみると、そうではなさそうです。
You say you'll change the constitution Well, you know We all want to change your head 社会の構造を変える? まずは自分の頭の中を変えろよ。
歌詞のこの部分だけを見ても、どこか運動家側を突き放しているような感じがします。かといって、体制側でもないようです。ジョンの考えはもっと複雑だったのかもしれませんね。この曲の歌詞は、当時の社会情勢を踏まえて考えるとオモシロいかもしれません。
ともあれ、初の政治ソングです。想像するに、ここからジョンの思想が平和活動へとつながった可能性もあります。Give Peace A Chance や Imagineの源流になっているかもしれないと考えると、重要じゃないわけがないですね。ということで Revolution でした。
伝説を生み出した曲 Get Back
最後に取り上げるのは Get Back です。1969年にリリースしたビートルズ19作目のシングルです。2021年に公開された映像を見ても分かる通り、この曲は伝説のルーフトップコンサートの象徴的な楽曲です。
1962年から1970年までのわずか8年という活動期間で、ビートルズはさまざまな伝説を作ってきました。アメリカにおけるスタジアムコンサートもそうですし、日本の武道館コンサートもそう。生み出した伝説は数えきれないほど。彼らはルーフトップコンサートという伝説も生み出しました。
屋根の上でコンサートをする?何の意味があるのよ?
そう感じる人もいるかもしれませんが、「屋上ライブ=ビートルズ」の公式となり今存在していることを思えば、そのスゴさが分かると思います。どんなミュージシャンが屋上でライブやっても、ビートルズのマネになってしまいますから。
その屋上の象徴的な楽曲としてあるのが Get back です。だから超重要。今見てもあのパフォーマンスは最高じゃないですか。そこらへんのパンクバンドよりもパンクですよ。でもこの曲がビートルズの歴史を変える1曲かと問われると、苦しいところですね。そこは、まあご愛嬌ということで。
ただ、ビートルズが人前で演奏した最後のコンサートとしてルーフトップを捉えるならば、「歴史を変えた1曲」だと言えるかもしれませんね。まあ、その場合、Don’t Let Me Down や Dig a Ponyなんかはどうなるんだという話ですが…。ということで、Get Backでした。
ビートルズの変化は世界の変化だ!
ビートルズの歴史を変えた楽曲を紹介してきました。かなり偏見がある選曲であることは重々承知しています。重要曲はほかにもまだまだたくさんあると思います。
異論反論オブジェクションもあると思いますが、ここでひとつ言いたいのは、ビートルズが世界に与えた影響は思っている以上に大きいということ。スイッチオンしたら電気が付く的に変化は起こらないので、ビートルズがもたらした変化をどうこう語るのは非常に難しいのですが、私は今後も、ビートルズの功績を、図太くも発信し続けたいと思います。
以上、「【この曲で変わった!】ビートルズの歴史を変えた究極の8曲」でした。おしまい。
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もう少しビートルズを詳しく知りたい方は、歴史を押さえておきましょう。10分で分かるバージョンを用意しております。そして、忘れちゃいけない名曲ぞろいのシングルの歴史もあります。
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